一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ケヤキの群落

質問者:   一般   mitty
登録番号3813   登録日:2017-07-07
ケヤキの場合、種子散布は二種あり、種子単体で母樹の近くに落下するもの(多数)と枝葉ごと風で比較的遠くへ飛ばされるもの(少数)がある。母樹の近くに落下した種子は発芽後、稚樹のうちに枯れるものが多く、少数派の遠くへ落下したものと比べて生存率が低い、とあります。それではどうして水と光を大量に必要とするケヤキの群落が水辺の岩盤の上などに見られるのでしょうか?
mitty 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。

 ご質問の前半と「それではどうしてーー」以下とのつながりがはっきりしませんが、以下のように解釈して回答します。つまり、「母樹の下で発芽したケヤキは十分な陽光が得られないので、成長が進まず稚樹のうちに枯死するものが多いのに、渓谷の陽光の少ないところで、しかも岩盤の上でなぜ群落を作るほどに育つことができるのか」。また、群落という表現が適っている場合なのかどうかもわかりませんので、ここでは群生している、つまりいっぱい育っているということとして理解します。

 ケヤキはふつう肥沃な土壌条件で湿潤な土地を好みます。それ以外のところでは育たないというわけではありませんが、どれだけ大きく成長できるかに影響します。これはケヤキに限ったことではなく、条件が悪くてもある程度は成長できるということはほぼすべての植物についても言えることでしょう。ただ、最適条件ではないところに生育する植物は、すぐそばに勢いよく成長する植物が生えると、競争に負けてしまうこともあります。

 ケヤキは自然界ではニレの仲間と同じように、谷川沿いに見られることが多いです。また斜面になった土地の下方部によく育ちます。これは斜面の下部のほうが水の供給が多い、つまり透水性が高いからだと考えられます。ご質問の「岩盤の上に生えている」というのは実際にどれだけたくさんのケヤキが、どの程度むき出しの岩盤の上に、どのくらい大きく育っているのかわかりませんが、少なくともその場所ではケヤキの生育条件が満たされているのではないのでしょうか。樹木は、林の中で芽生えると、他の大きな樹木と競えるようにまず背丈を伸ばそうとします。小さいうちからどんどん枝葉を広げるのではなくて、まず十分な陽光が得られうような高さまで伸長します。渓谷の陽光が少ないところでも、ある程度まで背丈が伸びると樹木は陽光をいっぱい受けられるように樹冠を広げていきます。全く土壌のないむき出しの岩の上には育たないでしょう。根がはれるだけの量も養分もある適度の土壌が岩盤を覆っているのではないでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2017-07-09
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