一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ユリ科とヒガンバナ科の子房位置について

質問者:   一般   malo
登録番号3816   登録日:2017-07-11
単子葉植物の進化について、知りたいと思っています。質問内容についてAPG分類以前は、前者は子房上位で後者は子房下位と理解していました。APG分類以後に変わっていますか。できましたらネギ属などを例にとって教えていただければ嬉しいです。
malo さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

回答を基礎生物研究所の長谷部先生にお願いしました。分類群もDNA解析による系統の解析を加味して少しずつ改変されているようです。

【長谷部先生の回答】
被子植物の系統関係がほぼ明らかとなり、子房の位置は子房下位から子房上位、あるいは、子房上位から子房下位へといろいろな系統で何回も繰り返し進化したことがはっきりしました。また、科に含まれる属もいろいろ変わりました。現在、ユリ科はウバユリ属、ツバメオモト属、カタクリ属、バイモ属、キバナノアマナ属、ユリ属、チシマアマナ属、タケシマラン属、ホトトギス属、チューリップ属などのみを含むと考えられています。これらは全て子房上位ですので、ユリ科が子房上位というのは正しいです。ユリ科はユリ目(目は科の上の分類群)ですが、ヒガンバナ科はクサスギカズラ目に属することがわかりました。ヒガンバナ科は共通の祖先から、最初にムラサキクンシラン(アガパンサス)亜科が分かれ、その後、ネギ亜科、ヒガンバナ亜科に分かれたことがわかってきました。ムラサキクンシラン亜科は子房上位、ネギ亜科も子房上位ですが時に少しだけ子房を花被が覆うことがあります。そして、ヒガンバナ亜科は子房下位です。ネギ亜科の中ではネギ連(ネギ属のみを含む、連は属と科の間の単位)が最初に分かれ、次ぎにツルバキア連(ツルバキア属などを含む)とギリエシア連(ハナニラ属などを含む)が分かれました。これら3連はどれも子房上位ですが時に少しだけ子房を花被が覆うことがある点で共通です。以上より、ヒガンバナ科には子房上位の属(ムラサキクンシラン亜科とネギ亜科)と子房下位(ヒガンバナ亜科)の属を含むことになります。

 長谷部 光泰(基礎生物学研究所生物進化研究部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-07-26
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