一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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綿花が吸収した塩分はどう処理されるか?

質問者:   中学生   Cherry
登録番号3830   登録日:2017-07-28
綿花で塩害被害を修復しようというプロジェクトがありますが、塩トマトやアイスプラントは塩水で育成して野菜自体に甘味や塩味が出ますが、綿花が吸収した塩分はどうなるのでしょうか?葉や花を食べると塩味がするのでしょうか?綿花が塩害に強い理由を教えて下さい。
Cherryさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

植物の塩耐性の仕組みの研究はたくさんあり、いくつかの仕組みがあることが分ってきています。ワタは塩耐性が高い作物の一つでたくさんの研究があります。塩濃度(塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムを使用)の高い状態で栽培すると茎葉部分のナトリウムイオン、塩素イオン量が大きく上昇するとともにカリウム、カルシウム、マグネシウムなど他のイオン吸収は抑制されます。つまりナトリウム塩は蓄積されます。
植物の塩害は二つの要素でおきると思われています。一つは塩濃度が高いと、根周辺の浸透圧が高くなりその結果として根は水を吸収することが出来なくなります(浸透圧ストレス)。さらに、ナトリウムが細胞壁にあるカルシウムなどと置き換わって細胞壁の物理的性質が変り(平たく言えば脆くなる)さらにナトリウムの透過が容易になって、細胞質側にナトリウムが入りやすい環境となります。二つ目は、細胞質内に塩が多量に吸収されたときに起こるイオンストレスです。イオンストレスの影響はいろいろな面に現れますが、細胞質内の塩濃度が高くなることを避けるために液胞内に移動蓄積されます。そうすると液胞内の浸透圧が高くなり、細胞質の浸透圧とのバランスが崩れ、細胞質側から液胞側へ水が移動して細胞は大きな傷害を受けます。耐塩
性の高い植物はこの傷害を避けるために細胞質側の浸透圧を高くする物質を新たに合成してバランスをとるようにしています。ワタでは実際に、細胞質側の浸透圧を高める物質としてグリシンベタインが合成蓄積されることが幾つも報告されています。ですから、たぶん高塩濃度で生育したワタの葉には塩がありますので、かじれば塩辛いと感ずるかもしれません。塩耐性の仕組みにはこのほかに、体内に入った塩を葉表面にある分泌腺にため込んで最後の排出する仕組みをもった植物もあります。アイスプラントはその一例です。

このコーナーの検索機能で「塩 耐性」をキーワードとすると幾つか関連するQ&Aがありますので参考にしてみて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-08-01
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