一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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トランスポゾンについて詳しく知りたいです

質問者:   中学生   hana87
登録番号3835   登録日:2017-07-31
自由研究で朝顔を育てています。
今年は変化朝顔の種を手に入れることが出来たので
8種類の変化朝顔を育てています。
変化朝顔にはトランスポゾンという物質が関係しているというところまでは、本で調べてわかりましたが
トランスポゾンがどういうものなのか
私が調べた本の説明はどれも難しくてよくわかりません。
トランスポゾンは花の色にだけ作用するのですか?
私が育てているマルバアサガオ紅条斑点絞り(G0082)の花の絞り模様が花ごとに違うのはトランスポゾンの仕業ですか?

hana87 さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

トランスポゾンについてのお尋ねですね。このコーナーにはトランスポゾンに関する質問がかなりたくさんありますので、まず「トランスポゾン」「アサガオ、朝顔」「花の色」などをキーワードとして検索してみて下さい。たくさん出てきますが、登録番号2186, 2304, 3539, 3560をまずご覧になって下さい。

これらの解説と重複する点がありますが、中学生向きにごく大ざっぱにご説明することにします。しかし、最初に基本的知識として、1)生物の特性はすべて、もっている遺伝子の働きで決められる、2)遺伝子はDNAと言う物質―高分子物質―から出来ていて、長く連結した列車のように一列に並んでいる、3)生物の個体はたくさんの細胞の集まりだが、すべての細胞は同じ組成の遺伝子(DNA)をもっている、4)全部の遺伝子が同時に働くのではなく、1つの遺伝子はあるときは働き、別のときは休んだりする、と言うことを理解しておいて下さい。

さて、このように一列に並んだ遺伝子の中には自分から連結を外して列車から飛び出し、列車の他の場所あるいは他の列車の中に飛び込むものがあります。これを転移遺伝子(トランスポゾン、トランスポーズ=転移する)と言っています。トランスポゾンは種類も数もたくさんあって、どのトランスポゾンがいつ飛び出し、どこへ飛び込むかには規則性がありません。トランスポゾンが、働いているあるいはこれから働くことになっている別の遺伝子の中に飛び込むとその遺伝子の働きを止めてしまいます。ときには飛び込んだトランスポゾンは再び抜け出して別のところに飛ぶこともあります。このように1度働きを止められた遺伝子もトランスポゾンが抜ければ、多くの場合また働けるようになります。ある組織で色素を合成する遺伝子に飛び込んだり抜け出したりした場合、その組織は白色になったり、有色になったりします。私たちは数万もある全部の遺伝子の働き方を知っているわけではありません。トランスポゾンで機能が破壊された遺伝子が組織、器官の形作りや色素合成に関与する働きをもっていれば局所的な形態変化や色の変化として「気がつき」ますが、そうでない場合にはトランスポゾンがどんな遺伝子を破壊したのかは分りません。ですからトランスポゾンは「花の色にだけ作用する」ものではありません。ここでは、体細胞におけるトランスポゾンの働きだけを述べましたが、生殖細胞で働けば変異した遺伝形質として次世代に遺伝することになります。最近ではいろいろな形態変異の原因となっており生物進化に重要な働きをしていると考えられています。

 最後のご質問マルバアサガオの条斑点絞りもトランスポゾンの作用によるようです。

 分らない点があればいつでもこのコーナーをご利用下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-08-02
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