一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トマトの葉柄の巻き付きについて

質問者:   高校生   ピヨ
登録番号3851   登録日:2017-08-12
学校と自宅でミニトマトを育てています。トマトの葉は複葉ですが、その葉柄がほかの物に巻きつく現象があります。近くの畑のトマトにも同様の現象みられるものもありました。
全ての葉柄が巻きつくわけではなく、なにか物が当たると曲がり始めるようで、新梢より下葉の葉柄に起こりやすいようです。
そこで、試しに細い棒を葉柄に軽く当てるように立てて観察すると1日目には棒に向かって曲がり始め2日目には巻き付き始めました。風で茎が斜めになったりするとより多くの葉柄が巻きつくような気がします。
ただの窒素過多が原因でしょうか?
ピヨさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。接触の刺激を与えると屈曲の反応が見られる現象は「接触屈性」と言いますが、巻きひげや蔓植物などで見られます。根でも見られます。ピヨさんはトマトの葉柄が支柱などに「捲きつく」現象を観察しているということですが、葉柄はもちろん小葉の葉柄でしょうね。また具体的に葉柄のどの部分(背面/腹面)への刺激なのか、「捲きつく」と判断する基準はどの程度なのかがはっきりしませんので、本当に接触屈性の類の現象かどうか判断し兼ねます。私の知る限りトマトの小葉の葉柄が接触屈性を示すという報告は見つかりません。そこで、友人がビニールハウスで栽培している4品種、合計40株のトマトを観察してきました。その結果、残念ながら屈曲に該当する葉柄は見つかりませんでした。一つ考えられることは、「上偏成長」という現象です。葉などの背腹性のある器官で上側(腹側)の成長が、下側(背側)の成長より上回るため、下向きに曲がった成長が起きる現象です。これは上側の組織へのオーキシン(植物ホルモン)の分布(移動)が増加することにより、上側の組織の細胞伸長が促進されることによるとものです。この点は光屈性の場合に似ています。上偏成長は植物ホルモンのエチレンが引き起こすため、昔はエチレンの生物検定に使われていました。エチレンはオーキシンの背腹偏差分布をもたらします。エチレンは植物組織/器官が摩擦や振動などの機械的刺激を受けると容易に生成されます。もしかすると、ピヨさんが観察された現象は上偏成長と関係があるかもしれませんね。ちなみに、上偏成長の研究材料としてトマトの葉はよく使われます。
接触屈性については登録番号3674, 上辺成長については根ですが登録番号3743 を参考にしてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-08-15
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