一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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塩の結晶

質問者:   中学生   のり
登録番号3856   登録日:2017-08-15
こんにちは。
夏休みの実験で、雑草に食塩水を加えるとどうなるか、という実験をしています。実験方法は、そのあたりに生えているような雑草を拾ってきて、食紅に一晩つけて赤く染め、濃度約4%の食塩水(紙コップの中)につけて、一時間ごとに写真を撮り、観察をしていくというものです。
始めてから、7,8時間後ぐらいに雑草の下の方の茎に、塩がついていました。母は、「紙コップの中の塩が茎にくっついて結晶になっているのかな。」と言っていたのですが、その部分は、食塩水に浸っていません。もっと時間が経つと、上の方の茎にも塩がついていました。この塩は、何故この部分についていて、何なのでしょうか。
できるだけ早くお答えして頂けると嬉しいです。
のり様

 みんなのひろばの植物Q&Aに質問をお寄せいただきありがとうございます。

 細胞膜は半透性の膜です。半透性とは、水を通すが水に溶けている物質(溶質:のりさんの場合は食塩)は通さないという性質です。容器を半透性の膜で仕切って、片側に溶液(溶質をとかした液)を、もう一方に水を入れると水は溶液の方に移動して水位が上昇します。圧力をかけて、水位の上昇が起こらないようにした時の圧力が溶液の浸透圧です。溶液の濃度が高いほど浸透圧が高くなります。浸透圧が高いと水を吸引する力が強いと思って下さい。
 植物の細胞の浸透圧は、ユキノシタの葉では0.9%の食塩水と同じ(水の移動がおこりません)という記載があります。細胞の浸透圧は植物によって、また部位によって違いますが、実験に使った4%の食塩水の浸透圧は、細胞の浸透圧に比べてかなり高いことになります。ですから、4%の食塩水に浸された細胞膜に包まれた細胞質からは水が吸い出され、ちじむことになります。ちじんだ細胞膜の外側は吸い出された水で食塩水の濃度がさがりますが、そこには拡散(濃度の高い方から低い方へ物質が移動していく現象。水にインクを一滴落とすと、インクは次第に周囲に広がっていき、最終的には一様な濃さの水になる現象を思い浮かべて下さい)によって食塩水は元のたかい濃度に戻ります。このような過程が下の細胞から順次繰り返されることに毛細管現
象も加わって、食塩水は茎の上部に移動していくものと思われます。
 4%の食塩水につけた植物の茎の上に結晶が見られたということですね。対照として水につけた植物を観察されておられると思いますが、そこでは、どうでしょうか?食塩水につけた植物にだけみられるとしたら、その結晶は食塩か食塩によって作られたた物質{たぶん食塩の結晶)と考えてよいと思います。時間をおいて上部でもみられたということは、食塩水の上昇の時間経過からも支持されると思われます。
 それでは、どうして茎の表面に結晶ができたかということになりますが、いくつか可能性があります。茎の表面は溶液の通りにくい物質で覆われていますので、溶液が表面上に出てくるには通路が必要になります。その通路の可能性の一つは傷です。表面の傷から染み出た食塩水の水が蒸発して、濃度が高まり結晶化した可能性があります。無傷の場合、考えられるのは気孔です(気孔は葉にありますが、茎にも存在します)。他にもあるかもしれませんが、思いつきません。考えてみて下さい。

 ところで、実験材料に雑草を使ったそうですが、雑草と呼ばれている植物にも名前があるはずです。植物の好きな人には「雑草」と呼び捨てにされるのは悲しい思いです。また、植物によって実験結果が異なることは、しばしばあります。他の人は同じ実験をして確かめることもできません。実験材料をはっきりさせることは、とても大事なことです。ぜひ使用された植物の名前を図鑑などで調べて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-08-17
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