一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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透明のプラ鉢使用について

質問者:   自営業   T.D.L.M.O.
登録番号3900   登録日:2017-09-10
植物を育成する際に、土壌の状態を側面から観察したいので、透明のプラスティックポットを使用したいと考えています。
商品として探せば少しは見つかるのですが、あまり一般的に普及していないように思います。
側面から鉢内に太陽が当たると根の育成が悪かったりなど、植物の育成上、都合が悪いことがあるのでしょうか?
また根は光を感知するのでしょうか?
ご教授いただけましたら幸いです。
T.D.L.M.O. 様

みんなのひろばの植物Q&Aをご利用下さりありがとうございます。
回答は光屈性や光形態形成について研究されている飯野盛利先生にお願いしました。

【飯野先生の回答】
 芽ばえの根を用いた研究では、多くの場合、光は根の伸長成長を阻害することが報告されています。ただ、促進するという報告もあります。植物種や条件によって異なるようです。また、芽ばえの根は、負の光屈性を示し、光から遠ざかるように曲がります。植物種によってよく曲がったり、あまり曲がらなかったりするようですが、近年の研究でモデル植物になっているシロイヌナズナやイネの根は比較的よく曲がります。
 ご質問の趣旨は、鉢植えされた栄養成長期の植物において、根は光を直接感じて反応するかですね。正直言ってあまり研究されていないのですが、比較的最近、シロイヌナズナを用いた研究が報告されています(Siva-Navas et al., 2015: The Plant Journal 84, 244-255)。24時間の明暗周期をつけて地上部を育て、根だけに光(白色光、あるいは単色光)を当てたらどうなるかを暗条件と比較して調べています。根は寒天培地で育てているので、土の条件とは異なりますが、これはやむを得ないでしょう。この研究では、光は主根の伸長成長を阻害し、側根の発生を早めるという結果が得られています。20~30%程度の成長阻害です。
 透明のポットで育てると根はどうなるか?パデュー大学(アメリカ・インディアナ州)の研究者がポインセチアを用いた興味ある観察結果をインターネットで公開しています(https://ag.purdue.edu/btny/ppdl/Pages/POTW_old/12-6-10.html)。光を通さないプラスチックポットで育てると多くの根がポットの側面(プラスチックと接する部分)で観察されるが、光を通すポットで育てると、根は観察されなくなるという結果です。この結果から、ポインセチアの根の成長は光によって阻止されるので、光を通すポットは使わない方がよいという結論を述べています。ただし、公開されている写真を見る限り、光を通すポットで育てても、地上部は正常に生育しているように見えます。根は負の光屈性により光を避けて成長するため側面で観察されなくなるが、土の中では、しっかり成長しているのではないかと推察します。
 根の生育状況を透明のポットで観察できるかですが、もしポインセチアで報告された結果が一般的な現象であるとすると、観察できないということになってしまいます。ここはぜひ、不透明のプラスチックポット、透明のプラスチックポット、色付きのプラスチックポットを用いて、いろいろな植物を育て、ポット側面と内部における根の生育状況を調べてみてはいかがでしょう。興味深い結果が得られるかもしれません。


                 
飯野 盛利(大阪市立大学大学院理学研究科植物園)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-10-10
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