一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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リン酸による水耕栽培でのpH の変動について②

質問者:   一般   かたおか
登録番号3915   登録日:2017-09-22
水耕栽培でのpH の変動について。

『植物栄養学第2版』文永堂出版には、「リン酸イオンの吸収に伴って細胞外のpH が上昇するので、1モルのリン酸イオンは1モルのプロトンと共輸送であると推定される」p.104 とあります。

②リン酸を養液に入れることで、pH 6.0 から5.5 に下げたのだが、リンの吸収が充分になされ、その後6.0 以上に上昇するということは考えられますか?
オルトリン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオンなど、pH 下降剤の構成成分によって、リン酸とプロトンのモル比が異なるような可能性を想定しています。

その他のpH 変動要因は考慮せず、pH 下降剤はリン酸を使うものとします。
かたおか様

このコーナーをご利用くださりありがとうございます。ご質問には広島大学の和崎先生から下記のような回答文をいただきましたので参考になさってください。

【和崎先生からの回答】
原理から言えば、リン酸の吸収が十分に起きた場合にpHが5.5から6.0まで上昇することはあり得ると思います。ただし、「その他のpH変動要因は考慮せず」という点は実際的ではありません。リン酸の吸収がプロトンとの共輸送であることは培養細胞を用いた実験から推定されています。処理液中のリン酸の減少量と、処理液におけるpHの上昇から求められるプロトンの減少量が等モルであったことが根拠になっています。このときの実験でも、リン酸を全て吸収したのちにも処理液のpHは低下しています。別の要因があることを示唆していて、このことを考慮しないことはとても難しいです。

根からの養分吸収はリン酸だけではなく、窒素など他の養分も吸収されています。培養液のpH変化には窒素源も影響しています。アンモニアが主な窒素源の場合にはpHが下がりますし、硝酸が主な窒素源の場合にはpHが上がります。また、根からは有機酸が分泌される場合も多く、これもpH変動要因となっています。

 和崎 淳(広島大学大学院生物圏科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2017-09-29
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