一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カイワレを電流で育てる

質問者:   一般   ねむねむ
登録番号3935   登録日:2017-10-12
初めまして。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
今、私の趣味で2年前からカイワレを育て続けています。
先日子供に「肥料を使わないでもっと元気に早く育ててみよう」ということになりまして、直流安定化電源を購入し実験をはじめました。
まず発芽の段階ですが、プラスチックのカイワレ育成ケースの底に銅板をしいて電流が流せるようにしました。その後は今までと同じ様に、プラスチックの種を置く板に種を置き、半分ぐらい種が水で浸るようにしました。
銅板と種が直接接触している場所はありませんが、何度か実験したところ、普通よりも発芽までの時間が早いことが多いことに気づきました。
「もしかしたら電流が銅板から水道水を通して種に伝わり、電流が発芽を促進させているのかな?」と思うのですが、いくら調べても電流と発芽が早くなる原因がわかりません。

説明が分かりにくくて申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
ねむねむ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。「肥料を使わないでもっと元気に早く育ててみよう」ということですが、植物をちゃんと育てるには水、肥料(養分)、光(光合成のために)そして適切な温度が必要です。種子が発芽してすぐは、自分が持っている貯蔵物質を利用して成長できますが、それが尽きると光合成に頼ることになります。光合成は直接的には糖やデンプンを合成しますが、タンパク質や核酸などの他の大切なな有機物は窒素、リン、イオウなどを必要とし、また、さまざまな細胞内の生化学反応を触媒する酵素の働きを助けるためにいろいろな金属イオンも必要です。これらの元素は肥料として植物が根から吸収するものです。したがって、肥料を使わないでもっと元気に早く育てることはできないと思います。
しかし、種子を早く発芽させたり、芽生えの成長を促すことは肥料と関係なく行うことができます。種子がどのように発芽して、芽生えの成長はどのように調節されているかを理解すれば(登録番号:0290;1717を参照してください。)、その進行が早まるような条件がつくられると成長は促進されるでしょう。直流電流を与えてみようという発想はどこから得られたのですか。実は植物の種子の発芽や成長が電流を与えることによって促進されるという実験や報告は100年以上も前からあるようで、植物の種類も多様です。最近でも、web sitesを調べてみると学位の仕事から、小中高の理科実験、実用化を図る実験などかなり多くが見られます。いろいろ調べてみましたが、電流が発芽や成長を促進するメカニズムの解明に取り組んだ研究は見つかりませんでした。通電することで培養液(水)の温度が上がったとか、培養液や種子中に含まれる有機酸やアミノ酸などのイオン化が進められたとが発芽の促進につながったなどと証拠のない憶測をすることは楽しいですが。
とうわけで発芽促進の「原因」は分かりません。強いて言えば、発芽の進行を調節している過程のどこかが影響を受けるということでしょう。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2017-11-24
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