一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ニンジンの根のつくりについて

質問者:   会社員   ニンジン好き
登録番号3954   登録日:2017-11-06
ニンジンで型抜きをしたら、
型抜きをした中心の部分と外側の部分で味が違いました。

中心は水っぽく、あまりおいしくありませんが
外側は甘みがありおいしかったです。

これはニンジンの根の構造によるものだと思いましたが、
中心、外側がどういう構造なのかがイマイチ解らなかったので質問しました。

ニンジンは大まかに外側のオレンジ色の部分、中心にある白っぽい円状の部分、その中心のより明るいオレンジ色の部分があると思います。

外側のオレンジ色の部分が貯蔵器官である皮層で、白っぽい部分が内皮、中心が維管束と考えましたが、
調べると、外側が師管、白っぽい部分が形成層、中心が導管と書いてあるものもあります。

実際はどういった構造なのでしょうか?


また、内側があまりおいしくなかった理由も分かると嬉しいです。
ニンジン好き さま

植物Q&Aへの質問、ありがとうございます。
 まず、ニンジンの構造について説明します。下記のページを見てください。
ニンジンの断面図
https://www.researchgate.net/profile/Ferenc_Firtha/publication/26547929/figure/fig6/AS:213985547821071@1428029538948/Cross-section-of-carrot-structure.png
 食用にしているオレンジ色のほとんどは根です(オレンジ色の一番の上の部分は胚軸)。ニンジンを含む双子葉植物の根の構造はおおよそ決まっていて、外側から順に、表皮、皮層(Cortex)、内皮、内鞘、師部(Phloem)、形成層(Cambium)、木部(Xylem)、となっています。ちなみに、師部と形成層と木部を合わせて維管束と呼びます。
 この写真だと、一番外側の表皮の内側に濃いオレンジ色の皮層があり、その内側にやや白っぽいオレンジ色でドーナツ状の師部、そしてその内側にやや黄色っぽいリング状の形成層、さらにその内側に小さい丸い粒状の構造(実際にはこれが水を運ぶ道管)を含む木部、が確認できます。なお、形成層の部分は壊れやすいため、輪切りやイチョウ切りにして調理すると形成層の部分で内側と外側に分かれてしまうことがあります。
 さて、味についてですが、ニンジンが甘いのはニンジンの根の細胞がショ糖などの糖類を貯蔵しているためです。ショ糖などの元となるデンプン粒の分布を見ると皮層と師部に多く、木部には少ないようですので、これが甘さ(おいしさ)の違いを生んでいるのでしょう。また、中心部分の木部には水を運ぶ道管が多いため水っぽいと感じるのだと思います。
 それでは、ダイコンやゴボウ、カブなどの場合はどうなっているのでしょう。色々と分けてみながら味の違いを見てみるのも楽しいかもしれませんね。



出村 拓(JSPP広報委員長)
回答日:2017-11-24
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