一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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永久萎凋点を越えたトマト葉の相対含水率

質問者:   会社員   生物は天が作ったAI
登録番号4079   登録日:2018-04-24
トマト葉の水ストレス評価法として水ポテンシャルを測定するプレッシャーチャンバー法やサイクロメーター法が知られていますが、装置が高価で測定条件がなかなか難しいとお聞きします。そこで初歩的な方法として水に浸して吸水させその重量から相対含水率(水欠差)を求める方法について質問があります。相対含水率66%以下で永久萎凋点を越えたトマト葉でも測定可能でしょうか?萎凋して元に戻らない点との定義から吸水しないように思うのですが、何かコツがあるのでしょうか?
生物は天が作ったAI さん


みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

植物の葉の水ストレスを評価する方法として現在では、ご指摘のように葉の水ポテンシャルを機器で測定することが普通ですが、水欠差(葉内水不足度)を測定することも従来から行われている方法です。この場合生理的に意味のある状態、すなわち測定葉に水を与えたときに十分吸水が行われ、葉は水ストレスから脱して正常な成長をしうる状態にあるかどうかが問題点の1つでしょう。永久萎凋点とは、それ以下の土壌水分状態に置かれたとき回復不能の水ストレスを受ける点で、植物種によって違いが少なく、通常-1.5MPaとされています。なぜ回復不能になるかというと、永久萎凋点以下では光合成活性の低下をはじめとして細胞内膜系の機能や代謝活性全般に不可逆的な欠陥が生ずるからです。永久萎凋点以下に達した葉では気孔は完全に閉じていることが予想されるので、十分な水を与えても何らかの物理的作用で多少の水を吸収するかも知れませんがほとんど葉内への水の移動は起こらないと思います。したがって、水欠差を数字的に得ることは出来るでしょうが生理的には意味を持たない値です。登録番号0792では水ストレス、水欠差の測定法についての詳しい解説がありますのでご参考になさって下さい。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-05-01
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