一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トライコーム

質問者:   高校生   ばっしー
登録番号4116   登録日:2018-05-25
苗を見た時に種によってトライコームの量、多く集まっている位置が違っているのが観察出来たのですが、このように量や位置が変わるのは何でですか??またそれによって植物体でどのような変化が生まれますか??
ばっしー様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問では「苗を見た時に種によってトライコームの量、多く集まっている位置が違っている」と書かれていますが、これはいろいろな栽培植物種の苗のことと理解して良いでしょうか。トライコーム(毛状突起)は植物体の表皮細胞から分化してできます。葉、茎、果実、花冠などどこにでも観察されます。その形態は様々で、一個の細胞、複数の細胞、枝分かれなどいろいろあります。機能も様々です。トライコームについては登録番号2383, 4087を読んでください。どんな形のトライコームがどこにどのような分布で生じるかは、原則的には種によって決まっており、進化の過程で適応的にそのように作られてきたのでしょう。しかし、葉の形態にしろ、分枝の仕方にしろ生育環境などの条件によって多少の変異が見られるように、トライコームについても同じことが言えると思います。もちろん中には遺伝子レベルでの変異(突然変異)が起きて、変わった特徴のある形や分布を示す個体が生じることもあるでしょう、栽培植物は、人がその植物の特定の形質だけを強調し、選択育種してできたものですから、その植物(種)の本来のあり方とは異なっています。もし、同じ種の植物で明確な変異が見られるとすれば、突然変異でしょう。あなたが観察された植物は何かわかりませんが、研究上のモデル植物として世界中の植物学研究者が広範に利用している Arabidopsis thaliana (セイヨウシロイヌナズナ)ではトライコームの分化の調節機構に関してたくさんの研究がなされています。アラビドプシスのトライコームは先端が三又に分枝したものですが、その形状、サイズ、トライコーム間のスペース、分布、などたくさんの分化過程に関連して19くらいの遺伝子がその調節に預かっていることがわかっています。他の植物も多分同じような調節機構が働いているはずです。トライコームは植物によってそれぞれの働きを持っていますが、トライコームに関する何らかの異常は植物体にとって何らかの不利な結果をもたらすことがあるかもしれません。トライコームの一種である雄蕊の毛についての報告は参考になるかもしれません。(登録番号3804


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-05-28
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