一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ゼリーを作る時に入れてもよい果物は?

質問者:   会社員   おおしま
登録番号4128   登録日:2018-06-04
先日、娘とゼリーを作りました。
飾りとして果物をのせようとした時、キウイがプロテアーゼでゼラチンを分解してしまうことを思い出しました。他の果物でもプロテアーゼが入っているものはゼリーが溶けてしまうのでは・・!!と思い、どんな果物にプロテアーゼが入っているかを調べましたが、詳細は分からなかったので、教えていただきたいです。
プロテアーゼはキウイ、パイナップル、メロン、ナシ、イチジク、パパイヤに含まれていると分かりましたが、イチゴ、バナナ、モモ、ブドウ、スイカ、ミカン、リンゴでも入っていますか?親子で果物好きで、種類が多くて申し訳ないのですが、教えていただきたいと思います。
おおしま様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。お嬢さんとゼリー作りは楽しそうですね。情景が目に浮かびます。すでにご存知のようにゼラチンはコラーゲンタンパク質からできていますので、タンパク質分解酵素があれば分解されます。タンパク質(高分子ペプチド)を低分子ペプチドに分解する酵素をプロテイナーゼあるいはエンドペプチダーゼと言い、多くの種類があります。プロテアーゼはタンパク質のペプチド結合を切断(加水分解)する酵素の総称として使われます。ご指摘のように植物ではある種の果実に特に多く存在します。リストなさった果実の他にマンゴ、グアバなどにも多く含まれます。また、果実だけでなくショウガ(根)、メロン類、タケノコ、アスパラガスなどの野菜類にも多く含まれます。プロテアーゼは多かれすくなかれ普遍的に細胞内に分布する酵素で、植物ですと、液胞、葉緑体などの細胞内器官、細胞質に存在します。生体内では動的平衡が保たれていて、合成と分解という過程はいつも起きています。プロテアーゼは他の加水分解酵素も同じですが、プログラム細胞死(Programmed Cell Death, PCD)は勿論のこと(登録番号1796 参照)ふだんの生命活動において必要です。また、植物体(器官・組織)が老化に向かうと、例えば、果実の成熟過程などではプロテアーゼ活性は増加します。
果実はどれもプロテアーゼを持っていますが、その量は様々です。特に多いのはリストにあげた種類が知られています。イチゴ他の果実がキウイフルーツのようにゼラチンを溶かすほど多量にプロテアーゼを含んでいるという報告は見当たりませんでした。なお、プロテアーゼは植物種によってどれも同じではなく(働きは同じですが)、キウイフルーツはアクティニディン(Actiniidin)、パパイヤは(Papain)、パイナップルはブロメライン(Bromelain)、ショウガはジンギパイン(zingipain)とそれぞれ違う酵素です。ちなみに、キウイフルーツ(kiwifruit、キウィは鳥の名前)として現在流通している果実には2種類があり、アクティニディンガ単離同定されたのは早くからあるActinidia deliciosa cv. Haywardで、最近マーケットの主流となりつつあるActinidia chinensisi cv. Hort 16A (主品種)でシナサルナシ、オニマタタビ、ゴールドキウィなどの呼び名があるものにはアクティニディンは検出されなかったという報告がありました。こちらのキウィフルーツは俵型で名前のように果肉は黄色が多いです。食されたことはあると思いますが、こちらも一度試してごらんになってはどうでしょうか。どうぞフルーツゼリー作りをお嬢様とごいっしょにお楽しみください。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-06-11
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