一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

さとうきびの成長

質問者:   一般   たくちゃん
登録番号4131   登録日:2018-06-09
サトウキビの茎が成長する過程で、茎が曲がる向き(例えば、東西南北)は、常に一定方向ですが、その向きは、どこでしょうか? 
また、その理由はなぜでしょうか?
たくちゃん 様

ご質問をありがとうございます。
サトウキビの茎は、東西南北いずれかの方向に曲がって伸びるように見えますか? 
まずは、育っているサトウキビをご自分でよく観て確かめられることをおすすめします。自然条件下で育つ植物の茎は、大まかに見る限りにおいては、空(中天)の方向に向かって伸びる傾向があるように見受けられます。この傾向はサトウキビについても同じです。このように伸びて行く理由は、専門用語では、重力の方向に逆らって伸びる「負の重力屈性」や光の来る方向に向かって伸びる「正の光屈性」と呼ばれる特性が広く植物に共通して備わっているためであると説明されます。植物体の成長は、体を構成する細胞の分裂と伸長で裏打ちされている現象であり、これらの過程にはオーキシンなど植物ホルモンが大きく影響を与えることが知られております。植物の茎がどの方向に伸び、植物体がどのような形を作るかを決めるに当たっては、地球の引力に逆らって植物体を空中にバランス良く持ち上げて成長し、生存のために必要な太陽のエネルギーを獲得する「光合成(特に、光エネルギーを集めるアンテナ(集光))」の機能の効率を上げることが、中心となる指導原理となっているものと理解することが出来ます。ところで、地球引力の影響に関連して、無重力状態下での植物の茎の成長に興味がもたれますが、この問題に関するQ/Aが本コーナー(登録番号1937)に詳しい解説が掲載されておりますので参考になさってください。

因みに、サトウキビは背丈の大きい植物ですので台風などの影響により倒されることがよくあり、生産者にとっては厄介な問題となっているようです。しかし、倒れたサトウキビの穂先に近い若い部分は、倒れていることが刺激となって進む新たな成長によって直ぐに立ち上がり、上空に向かって伸びるようになります。また一方、海岸などに面して強い風にさらされる環境下では、サトウキビは体を支えるために一定の方向性をもって伸びているように見受けられますこともあります。いずれの場合においても、重力や光や風などの刺激が植物よって感知され、それらの情報に基づいて植物ホルモンの体内分布に片寄りが生じた結果、茎の成長の方向が変えられたものであると考えられます。

光のことを中心に考えると、植物はエネルギーを求めて太陽からの光の方向に向かって成長するので、、茎や葉が、朝は東に夕刻には西に、その方向を変えながら生長していること、また、私たちの住む地球の北半球においては光の強い南の方向に向かって茎が伸びる傾向があるのではないかなどとの憶測が生れます。そのようなことが実際に起きているかどうか、観察してみてください。



佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-06-14
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内