一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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苗の判別

質問者:   高校生   ばっしー
登録番号4135   登録日:2018-06-11
今高校生で野菜(キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、スイカ、ウリ)を様々な品種育てています。苗を一目見れば品種が分かる野菜もあれば、苗を見ただけでは品種が分からない野菜もあります(キュウリやナスなど)このような違いが何故おこるのでしょうか?
ばっしーさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
種と品種の違いはおわかりですね。キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、スイカ、ウリなどは種です。種の中にはすでに自然におきた突然変異や人工的におこした突然変異などで性質が少しばかり異なったものは品種です。違った品種あるいは交配可能な近縁種などを交配してさらに新しい、より好ましい品種を作成すること(育種)で今ではどの蔬菜でもたくさんの品種があります。
ところでばっしー君が例にあげた、トマト、ナス、ピーマンはナス科、キュウリ、スイカはウリ科で、それぞれの科の中の植物は似た性質を持っていますが、形態的、生理的にはかなり違っています。どうして、キュウリとトマトの違い、スイカとキュウリの違いが出来たかは、長い進化の過程で遺伝子の構造が少しずつ変化してきたからです。この遺伝子の変化(突然変異)は無秩序におこり、変異の結果が多様な自然環境や他種との競争の中でも生存できるものであれば生き残り、そうでなければ生き残れない、といったことを繰り返してきたので遺伝子の変異が蓄積していって今のトマトとナスの違い、キュウリとスイカの違いが出来てきたものです。
さて、品種をつくる育種も、違った組成の遺伝子をもつ近縁種や他品種を交配して、遺伝子の一部を組み込む作業です。例えば、A品種にB品種がもつ耐病性を与えるために交配して、B品種の耐病性遺伝子をA品種に入れますが、同時に入ったB品種の耐病性遺伝子以外の遺伝子を戻し交配を繰り返して除きます。耐病性遺伝子は形態的形質には影響しませんから、A品種へB品種の耐病性遺伝子だけを入れた新品種A’は形態的にAとほとんど区別できません。しかし、実際には戻し交配を繰り返して目的遺伝子だけを導入することは時間と労力がかかるたいへんな作業です。そこで、目的遺伝子以外の遺伝子でも、生理的や作物の品質に大きな影響がなければ苦労して除く必要がありません。このような遺伝子の中に幼苗形態に影響を与える遺伝子が含まれていれば「苗を一目見れば品種が分かる」結果になります。またF1交配種は両親の遺伝子がそっくり入っていますから、幼苗形態が違う両親であれば「苗を一目見れば品種が分かる」確率が高くなります。
この質問を機会に遺伝と育種の仕組みをよく調べてみてください。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-06-19
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