一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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いつどこから糖になるか

質問者:   教員   中一自由研究
登録番号4139   登録日:2018-06-17
中学1年対象で、一週間ほどで実験に付き合って、自由研究をまとめさせたいのですが、
簡単なデンプンの検出と糖の検出方法で、時間帯や天気、植物の場所(葉のすぐそば、茎、根に近い茎…など)で、数値の比較ができるでしょうか。
中一自由研究 様

このコーナーをご利用下さりありがとうございます。
簡単な方法で見積もって、「結果を数値で表現して比較したい」とのお気持は大変良く理解できます。中学生が出来る実験でなければならないことが制約になりますが、この質問には早稲田大学の園池先生から下記のようなアドバイスがいただけましたのでご参考になさって下さい。

【園池先生からのアドバイス】
デンプンの検出方法としては、小学校からおなじみのヨウ素デンプン反応がよく用いられますが、この方法は、ある/ないを判別するにはよいのですが、定量性はよくありません。光の強さに応じてヨウ素液の発色が段階的に変わってくれれば、あらかじめ比較の対象となる比色表のようなものを作っておくことにより、ある程度数値に換算することができますが、なかなかそのような段階的な変化を示してくれません。

デンプンを定量する場合には、デンプン分解酵素によって単量体のブドウ糖(グルコース)にして、生じたグルコースを定量する方法がとられます。グルコースの定量には、中学高校の化学実験に用いられるベネジクト液も使えますが、その場合は比色表を使って数値化することになります。より専門的には、グルコースにグルコース酸化酵素を作用させて、発生した過酸化水素をさらに定量する方法がとられます。ただし、これら方法は、複数の反応段階が必要なため、中学1年生の実験としては難しいように思います。

光合成の産物としての糖を考える場合には、スクロースが重要ですが、スクロースは安定な物質なので、これを直接定量することは困難です。そこで、スクロースを一度インベルターゼでグルコースとフルクトースに分解し、このグルコースを定量します。従って、結局、デンプンの場合と同様に、複数の反応段階が必要な定量法になってしまいます。

結論としては、中学1年レベルでの実験を前提とする場合には、数値の比較はあきらめて、デンプンの有無によって考えさせるような実験にせざるを得ないのではないかと思います。なお、光合成の実験の中では、 光合成によって発生する酸素がオオカナダモの茎の切断面から泡となって出てくる数を数える実験が比較的定量性があると思います。 1本のオオカナダモを使って、光の強さや色の影響を定量的に実験することは可能かもしれません。ただし、この場合も、茎の切断の仕方が変わると泡の数も変わるので、異なるオオカナダモの間で泡の数を比較することはできません。


園池 公毅(早稲田大学教育・総合科学学術院)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2018-06-18
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