一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹上のミニトマトの実から水分が抜けるのはどんな時でしょうか?

質問者:   会社員   salapla
登録番号4166   登録日:2018-07-23
トマトの糖度の上げ方で、水分を抑制して栽培する方法がある事は知っています。
しかし、底面給水プランターで、水分ストレス無く糖度21のミニトマトが出来ました(市販の糖度計(アタゴPAL-1)で測定しているので、正確かと言われると疑問が残りますが)。
つやぷるんゴールドという品種で、第二果房の実を1か月以上放置し、樹上で完熟させていました。
すると、そのうち3粒の実がしわしわで小さくなっていき、水分が抜けた分、相対的に糖度が上がって、16~21度になりました。
再現性に乏しく、その他の実がしわしわに水分が抜ける事が今のところありません。
生育中に水分を抑制するのと、完熟後に水分だけ抜けて糖度が上がる事は同じだと思いますが、なにをきっかけに実から水分を吸収するのでしょうか?


salaplaさん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は、農研機構食品研究部門(旧・食品総合研究所)で、野菜を中心とした収穫後生理学を研究されている永田雅靖先生に伺いました。

【永田先生の回答】
 野菜茶業研究所で実験用に25年ほどトマトを毎年栽培してきた経験もふまえ、一般論でお答えします。
 まず、トマトの糖度は、だいたい品種によるところが大きいと思います。ふつうの栽培法で栽培したときの糖度については、育成者(種苗会社)に問い合わせていただくのが、いちばん良いと思います。「つやぷるんゴールド」は、品種名ではなく、商品名のようです。品種名は、「CFプチぷよイエロー」と推定されます。この品種は、表皮が薄い特性のようです。
 一般的に、栽培で糖度を高くするには、根から吸収する水分を制限することになります。潅水量を減らすか、水耕液中の塩濃度を上げるなどの方法があります。これにより、葉の光合成量に比べて、果実の肥大に使われる水分が相対的に少なくなるため、結果的に果実の糖度が上昇します。水分を制限するため、普通栽培に比べて小さい果実になります。
 一方、お問合わせのケースは、まず果実が完成(完熟)した後に、水分が抜けてシワシワになり、内容分の糖度が高くなっているようですので、上記とは異なるメカニズムと考えられます。トマトの樹についた状態で放置されたために、いわば「干しぶどう」のようになったと考えられます。
 この品種は、表皮が薄いので、一般的なミニトマトに比べ、表面から水分が失われやすいことも原因のひとつと考えられます。 糖度の測定法については、問題ないと思います。
 結論としては、トマト果実の成熟後も収穫しなかったために、果実への水分供給が低下し、樹上で水分が徐々に失われて、干しぶどう状になり、糖度が上がったものと思われます。完熟した果実は老化期(後熟期、自己崩壊期)に入る頃で母樹からの水、糖の供給が停止し始めますがその時期は決して一定ではありません。そのため、上手く干しぶどう状になる再現性が低いのだと思います。シワシワになる前に糖度を測れば、もっと低い糖度だったと推察されます。


永田 雅靖(農研機構食品研究部門(旧・食品総合研究所))
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2018-08-06
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