一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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水耕栽培と根粒

質問者:   高校生   アコ
登録番号4169   登録日:2018-07-24
インゲンマメを種から育てました。根が鉢底から出てきたら1cmぐらい鉢底を水につけて2週間ほど育てました。その際、根腐れが起きないよう金魚のポンプで空気を送り続けました。そしてその鉢を水耕栽培用のベッドに設置して栽培しています。現在のところ屋外の苗と同じように順調に育ち実もたくさんつけています。ところがどう見ても水中に広がっている根に根粒が見つからないのです。いったいなぜつかないのでしょうか。またこの状態では窒素を取り入れる能力が落ちているのでしょうか。空中窒素を取り入れられない分、根からの吸収がよくなっていることも考えられるのでしょか。マメ科のインゲンを水耕栽培したら不思議な現象が起きたのでその理由を教えてください。
アコ さん

本コーナーをご利用いただきありがとうございます。水耕栽培でインゲンマメが順調に育っているのに根瘤をつけていないとのことですね。根瘤をつけず育っているインゲンマメの育ち方が屋外の苗と同じようだと書かれていますが、屋外の苗では根瘤は形成されているのでしょうか。ご質問には、筑波大学で根粒形成と窒素栄養の関係について研究されている寿崎拓哉先生から下記のような回答をいただきましたので、ご参考になさってください。なお、本コーナーには根粒菌に関する多数のQ/A(例えば、登録番号3852,1142,0169)がありますので、それ等も参考にしてください。


【寿崎先生からの回答】
インゲンマメに根粒がつかなかった理由として、次の3つの可能性を考えました:(1)根粒菌が周囲にいなかった;(2)肥料が根粒の着生を妨げた;(3)水耕栽培では根粒がつきにくい。
まず、(1)についてですが、今回インゲンマメを育てる際に根粒菌を与えましたでしょうか。もし、根粒菌を積極的に与えたにも関わらず根粒ができていないのであれば、(1)の可能性は否定されます。そもそも根粒菌を与えずに屋内でインゲンマメを栽培しているのなら根粒がつく可能性はほとんどないと思います。しかし、もし、屋外で栽培していて、かつ周囲に過去に根粒がついたインゲンマメを育てたことがある土があるならば、そこにはインゲンマメに根粒をつけてくれる根粒菌がいるはずです。その根粒菌が今回育てたインゲンマメに空気感染して根粒がつく可能性はあります。どのような場所で植物を育てたかは重要なポイントになります。(2)の可能性については、一般的に使われている肥料には窒素肥料が多く含まれていて、その窒素肥料が根粒がつくのを阻害することが知られています。もし、肥料をたくさん与えて育てているのなら、植物は元気に育つけれど、根粒はつかなくなります。また、(3)の可能性については、根粒菌の感染は湿度が高いところでは起こりにくくなるので、今回の水耕栽培のような湿度が高い栽培条件では根粒がつきにくくなります。これら3つの可能性が複合的に作用していると思いますが、一番は大きな理由になるのは(1)の可能性(根粒菌を与えたか与えていないか)だと思います。

寿崎 拓哉(筑波大学生命環境系生命環境群生物学類)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2018-07-31
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