一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トマトと温度差の関係

質問者:   会社員   稲中裕也
登録番号4182   登録日:2018-08-02
趣味でトマトを栽培している者です。知り合いから、ビニールハウスを借りておりそこでトマト(品種はフルティカ)を30株ほど育てています。私が住んでいる鳥取では最近夏場の高温でハウス内が47℃にもなります。夜間の温度は23℃くらいです。野菜など、よく温度差で味が乗ってくると聞きます。そういった背景で今年育てたトマトの味がいまひとつ乗ってないような気がしました。
本当に温度差は関係あるんでしょうか?
肥料も使わず、基本的には水のみの栽培なのですが、肥料を使わなかったのがいけなかったのでしょうか。それとも温度差が足りないのか、そもそも暑すぎるからトマトを育てるには向いてない土地柄なのでしょうか。
美味しいトマトを作るにはどのような条件が必要なのでしょうか?考えても考えてもよくわかりません。
何か少しでもヒントになるようなことがあればと思い質問させてもらいました。
稲中裕也さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

私どものコーナーでは、植物の生育過程で見られる現象についてのご質問に対して、その仕組みを学問的に分かっている範囲でのお答えできますが、特定の作物の「育て方」といったご質問には適格にお答えすることが出来ませんので一般的にお答えいたします。
穀類、果菜類などでは生育時の昼夜の温度差や日照時間が収穫物の品質、収量などに大きく影響することはよく知られている事実です。調べたところ、トマトでは日中温度は20から30℃、夜間温度が10から15℃が最適温とされています。日中は光合成によって成長の根源である糖を生産し、夜間は光合成が出来ないため生産がなく、呼吸による消費となります。昼間も呼吸をしていますが呼吸による消費は光合成による生産よりも遙かに少ないものです。光合成、呼吸共に温度が上がれば活性が強く、低ければ弱くなりますから、許容範囲内で日中温度が高く、夜間温度が低い方が最終的生産量が高くなることになります。昨今のように異常に気温が高くなると別の問題が生じます。高温になると花芽形成や花粉形成が異常となって果実収量が低下するばかりでなく、品質も低下します。

「肥料も使わず、基本的には水のみの栽培なのですが、肥料を使わなかったのがいけなかったのでしょうか。」:肥料は植物の食事です。使用するビニールハウス内の土壌がどんなものによりますが1年程度は施肥をしなくてもまあまあの収穫はあるはずです。どのくらいの間無施肥でも構わないかは土壌の質によります。

「美味しいトマトを作るにはどのような条件が必要なのでしょうか?考えても考えてもよくわかりません。」:趣味であろうと専業であろうと作物を育てる場合、栽培者によって結果は大きく違うのが普通です。栽培マニュアル通りに管理したつもりでも、作物の品種、栽培地土壌、環境の違い、雨量、日照時間の違い、施肥、灌水の時期、時間、量などは個人によって違います。これらの違いが作物の品質、収量に影響するためそれぞれが試行錯誤を繰り返して自分自身の最適条件を見出しているのです。「考える」だけで最善の方法が分かることはありません。失敗の経験を自分なりに分析し、次に試すことを繰り返すだけです。



今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-06
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