一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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家で行なったアレロパシー実験について

質問者:   中学生   すず
登録番号4195   登録日:2018-08-13
夏休みの自由研究でアレロパシーについて考えようと思い、セイタカアワダチソウとオオアレチノギクを根茎葉に分けてすりつぶして小松菜の種にかけ、発芽の様子を観察しました。
一週間ほど様子を見ましたが、枯れる様子もなく、比較対象した小松菜よりすくすく育っています。どうしてでしょうか。
使用した植物の量が少ないのでしょうか。
すずさん

「みんなのひろば」植物Q&Aへようこそ。質問を歓迎します。

アレロパシーは植物が合成して分泌あるいは揮散される化学物質によって近隣植物の生理現象(発芽、成長、形態形成など)に影響を与える現象です(くわしくは、植物Q&Aで「アレロパシー」を検索語として調べるといいでしょう)。
 さて、質問は、「セイタカアワダチソウとオオアレチノギクを根茎葉に分けてすりつぶして小松菜の種にかけ、発芽の様子を観察したが、効果が見られなかった、これは使用した植物の量が少なかったためか」という質問です。
 化学物質の効果を調べるには、使った量または濃度と効果の関係を定量的に調べることが大切です。たとえば、ギンナンは茶碗蒸しなどにも入っているありふれた食材ですが、一度に非常に大量に食べると中毒症状を起こすことがあります。日本中毒情報センターセンター(公益財団法人)で調べると、成人男子で40-300個を一度に食べると中毒症状を起こし、死に至る場合もある、これはビタミンB6欠乏症状によるとあります。普通こんなに大量に食べることはまず無いので、私も茶碗蒸しを食べますが、何の問題も起こりません。
セイタカアワダチソウやオオアレチノギクがアレロパシー物質を持っているという報告は沢山ありますので、「すずさん」の実験で効果が見られなかった原因としては、濃度が低かったこと、植物体の採取時期の関係で、まだその物質が高濃度には蓄積されていなかったことなどが考えられます。
実験をやるときにもっとも大切な点は、あとで他の人が同じような実験をやるときの参考になるように記録することです。質問には、「セイタカアワダチソウとオオアレチノギクを根茎葉に分けてすりつぶして小松菜の種にかけ、発芽の様子を観察しました。」とありますが、できるだけ細かく書きましょう:1)それぞれの植物材料はどこに生えていたものを使ったのか、採取場所、日時、草の背丈や植物全体の状況 (花をつけているか等)、2)「根茎葉に分けてすりつぶし」:それぞれ何gをどのようにすりつぶしたのか(すりつぶす器具や操作等)、3)「小松菜の種にかけ」:種はどこから入手したのか(例:種苗会社名、品種名)、また種子はどこにどのようにまいたのか、すりつぶしたものをどのくらいどのようにかけたのか(例:畑の100cm2あたりに何gの根から抽出したもの等)、どのようにかけたのか(例:種をまく土と混ぜたのか、水に懸濁して上からかけたのか)。なお、家庭では無理でしょうが、他の人が同じような実験をやるときの参考になるように実験を計画すればなおよいでしょう:たとえば、プラスチックのシャーレ(大きさを記載)を用い、それに土(種類、状況等を記録)を深さ10mm(例)に入れ、すりつぶした植物何gを入れてよく混ぜ、水をどの程度加えたか。また、すりつぶした植物部位による効果の差を調べるためには、それぞれ1/3の量のものについても調べるとなおよい。4)「一週間ほど様子を見ましたが、枯れる様子もなく、比較対象した小松菜よりすくすく育っています。」:それぞれ何個の種をまいたかを記載。
上記のことを参考にし、家庭菜園の一画でいいですから、抽出物の量も多めにして、1区画あたり数粒の種をまいて、実験をやってみてはどうでしょうか。


櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-18
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