一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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光合成について

質問者:   小学生   みい
登録番号4200   登録日:2018-08-16
夏休みの研究で豆苗を育てる実験をしました。

1つは日に当たる場所に置き、1つは日が当たらないように段ボールの中で育てました。1週間ぐらいすると日に当てたほうは15センチ、日に当てていないほうは24センチに成長しました。葉の色は日に当てた方が濃い緑、日に当てていない方が黄色になりました。

そして収穫をして味を確認しました。その後、1~2センチ残したものを2つとも同じように日に当てて再度育て始めました。
同じように成長していくと思っていたら、1回目の実験で日に当てていなかった方の葉は小さく、色は黄緑色でなかなか開きませんでした。1回目の実験で日に当てていた方は1回目と同じように大きな濃い緑の葉が開いています。

2回目の実験で同じ環境で育てたのに葉が違ったのはなぜですか。私は、日に当てたいなかった方は1回目の実験で豆の栄養を使いすぎたため、2回目に栄養が足りなかったのでは?と思っています。
あと、日に当てたときと日に当てなかったときとでは栄養が違うのかも教えてください。


みい さん

このコーナーにご質問をありがとうございます。
「豆苗(エンドウの芽ばえ)」の育ちと光合成の関係について調べられたのですね。予想を立てて実験し、くわしく観察しておられることに感心します。
ところで、豆苗はどこかのお店から買ってきたものですか。もしそうだとすると、芽ばえはすでに10~15センチほどに伸びていると思いますが、(実験1)においては芽ばえを一度切りとった後に新しく育ってくる芽を使われたのでしょうか。それとも、種子から自分で育てた豆苗を使い、実験は発芽の段階から始まっていることになるのでしょうか。この点を質問文から読みとることができません。

何れにしても、芽生えの成長は、植物の体を作っている細胞の分裂(細胞数の増加)と伸長・肥大(細胞の体積の増加)によって起こり、成長が続いて行くためには絶えることのない養分(要素)の補給が必要となります。ここで「養分(要素)」と簡単に書きましたが、その中みは二つに分けられます(ただし、この分け方は理屈にもとづくものであります)。養分(要素)の一つは、細胞を作っているタンパク質や炭水化物などの化合物(複雑な物質)を作るための材料となる簡単な化合物(簡単な物質)で、二つ目は、原材料である簡単な化合物を互いに結びつけて複雑な化合物に変える反応を進める上で絶対に必要なエネルギー(仕事をする能力)です。豆苗の成長においては、養分(要素)は次の二つの過程によって供給されます。芽生えの成長の初期の段階においては、根っこの近くの地下に埋まっている子葉(あなたが「豆」と呼ぶもの)に貯えられた物質の分解で生ずるエネルギーと原材料(簡単な有機化合物)が新しく成長して行く植物体の養分として利用されます(この状態を「従属栄養状態」と呼ぶことにします)。しかし、日(光)が当たって茎や葉が緑色になってくると緑色の細胞に光合成の仕組みが備わって、光合成の働きにより太陽からの光エネルギーが成長のためのエネルギーとして利用できるようになり、原材料も、子葉から供給される(有機)化合物ではなく、気孔を通して吸収される二酸化炭素や根から吸収される簡単な無機化合物に切り変わって行きます(この状態を「光独立栄養状態」と呼ぶことにします)。
(実験1)で、光が当たって葉が広がって濃い緑色になった状態の芽ばえでは、植物の状態は上に書いた「従属栄養状態」から「光独立栄養状態」に変換しております。これに対して、光を当てずに育って葉の広がりがなくて黄色くなったもやしのような芽生えでは、植物の状態は「従属栄養状態」のままであると思われます。

(質問1)への回答:
(実験2)では、次の脇芽(わきが、生長点を含む)からの芽ばえの成長を見ていることになりますね。(実験2)においては、前の実験で光を当てたものと当てなかったものの両方を同じ環境で光を当てて育てたようですが、前に光に当たっていなかった植物体は最初は「従属栄養状態」にあるため、緑の色素が合成されて光合成によって成長が支えられるようになるまでにはある程度の時間が必要だと思われます。前の実験で光が当たっていたものでは、土壌からの栄養吸収の仕組みを含め、光合成によって成長を支える体制がすでに準備できているので、芽ばえの成長はすぐに「光独立栄養状態」になるものと思われます。一般に、2回目、3回目と脇芽からの成長を続けて行くと、子葉に貯えられている養分が減ってくるので、芽ばえの成長は回数ごとに遅くなって行くようです。(実験2)において、前の実験で光が当たっていなかったものからの芽生えの成長が、(実験1)で最初に光を与えた場合に比べて遅く(不十分に)なったのは、栄養を貯えている子葉の老化によるものと考えられます。すなわち、あなたの推論が当たっているものと思います。念のために、両者について、子葉(豆)と根の状態を比較して観察してみられることをおすすめします。

(質問2)への回答:
一般には、「従属栄養状態」であるか「光独立栄養状態」であるかによって、植物体に含まれている成分には決定的に大きな違いが生れてきます。(実験1)で「収穫をして味を確認した」とのことですが、光に当てたときのものと当てなかったときのものでは、味やにおいに違いはありましたか? (実験1)の段階では両者とも子葉がかなり大きいままなので、まだ「従属栄養状態」と「光独立栄養状態」が重なっているので、全体としてはマメ(種子)の味が強すぎて、両者の違いに気づきにくいことがあったかもしれないと思われます(化学分析が必要ですかね?)。

この実験の結果が良い「まとめ」になることを願っております。



佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-18
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