一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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睡蓮の生態について

質問者:   中学生   ヨッシー
登録番号4203   登録日:2018-08-17
睡蓮について調べています。
睡蓮の葉を1本切り、花瓶に挿しました。葉が水面につかない状態で30分放置したところ、葉が丸まり枯れてきました。一日置くと完全に枯れました。
▽疑問
 睡蓮の葉は何故、短時間で枯れるのか?
▽考察
・睡蓮の葉の裏側で水を吸っている?
・睡蓮の葉には細かい毛が沢山出ている。その毛から水を吸っている?(手持ちの顕微鏡では調べられず)
・他の理由?
▽気が付いたこと
・もう1本茎を切り、水面に葉がつく状態で置いておくと、元気よく光合成をして茎から泡が出ていた。
・まるまった葉を1時間後再び水に戻したが、葉の縁は枯れてしまった。
参考書・資料を教えて下さい。

ヨッシーさん

植物Q&A「みんなの広場」へようこそ。質問を歓迎します。
回答は、植物生態学が専門の野口航博士(東京薬科大学)が、井上智美博士(国立環境研究所)と土谷岳令博士(千葉大学)のご意見を聞きながら、まとめてくださいました。

【野口先生の回答】
質問1)睡蓮の葉は何故、短時間で枯れるのか? 
回答:葉の裏側から水蒸気として水が失われて萎れたと考えられます。表側は主に気孔を通じて水蒸気が出入りするようになっており、表側の表皮の他の部分からは水が失われにくい構造になっていますが、裏側は水を失いにくい構造にはなっていないと思われます。

質問2)睡蓮の葉の裏側で水を吸っている?
・睡蓮の葉には細かい毛が沢山出ている。その毛から水を吸っている?(手持ちの顕微鏡では調べられず)
・他の理由? 
回答:裏側の表皮細胞から水が吸収されていると思います。私が観察したところスイレンは毛の密度は低かったので、毛からだけではないと思います。

質問3)気が付いたこと:もう1本茎を切り、水面に葉がつく状態で置いておくと、元気よく光合成をして茎から泡が出ていた。 
回答:茎ではなく「葉柄(ようへい)」になります。スイレンのような水生植物では、葉に光が当たると葉の内部の気体の圧力が上がり、葉の内部から葉柄内の細胞間隙を通じて、葉の内部の気体が移動します。葉柄が切られていたので、泡として観察できたのだと思います。気体はおそらく温度上昇による気体の膨張が主体でしょう。なお、ハスの地下茎(蓮根)には空洞がありますが、これは葉柄内の細胞間隙とつながっており、とりまく環境の温度の変化等によって空気の微小な動きが生じ、このようにして根の呼吸に必要なO2を供給していると考えられます。

質問4)まるまった葉を1時間後再び水に戻したが、葉の縁は枯れてしまった。 
回答:萎れた後に細胞が死んでしまったのだと思います。

質問5)参考書・資料を教えて下さい。 
回答:スイレンなどの浮葉植物の葉の構造について書いてある本は思いつきませんでした。水生植物の生態一般のことでしたら、養賢堂の「湿地環境と作物」は良いと思います。なお、千葉大学の土屋岳令研究室(生理生態学)のホームページには沈葉植物の根のガス交換に関する研究が紹介されています。


野口 航(東京薬科大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2018-08-30
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