一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹木の幹は茶色で、草の茎は緑色なのは何が原因ですか?

質問者:   中学生   植物好き
登録番号4205   登録日:2018-08-18
基本的に、樹木の幹の色は茶色、灰色、黒などと鮮やかではない色で、草は緑色や赤色など比較的鮮やかなものをよく見かけます。これらの違いの原因となるものは何でしょうか?
植物好き 様

みんなのひろばの植物Q&Aをご利用下さりありがとうございます。

草(草本植物)の茎では、水や養分の移動に関係する細胞群(維管束)とその周囲の葉緑体を含む細胞群(皮層など)の外側を表皮が取り囲み、水などがやたらに内部に入り込まないように物質の移動を制限したり、微生物の感染から保護したりしています。表皮の細胞は無色の一層の細胞からできていますので、葉緑体に含まれるクロロフィルという緑色の色素の色で茎は緑色に見えます。表皮細胞は植物によって、あるいは環境条件によってアントシアニンなどの赤色色素をつくることがありますので、赤色を示す茎も見ることがあります。

双子葉植物の茎は太くなりますが、それは茎の中に二次的に、リング状に形成された形成層(分裂組織)が分裂して、茎の内側に木部(道管など水の移動にかかわる細胞からなる組織)を、外側に師部(師管など養分の移動にかかわる細胞からなる組織)を作ることによっておこります。茎の内部で細胞分裂によって細胞数が増え、それが成長して大きくなると、当然木部や師部の外側にある皮層や表皮も大きくなる必要があります。そうしないと表面が裂けてしまいます。しかし、これらの組織は細胞分裂できませんので、細胞の大きさを大きくすることで対応することになります。草本植物の場合は一年ですが、樹木の場合は、形成層の分裂が十年、百年と続くわけですからそれでは対応できません。細胞の大きさを大きくするには限度があります。

樹木の場合は、主として皮層の組織の中にコルク形成層という分裂組織をつくることによって対応しています。コルク形成層の分裂によって生じた細胞(コルク細胞)は成熟するにしたがってタンニンなどの物質や空気をふくみます。細胞壁にはスベリンや蝋といった脂質が加わり、ちょうど表皮のように、物質の移動の制限や病虫害に対する防御に働きます。表皮はふるくなり枯死したコルク細胞とともに脱落しますので、コルク細胞層が表面に出て、表皮のような役割をすることになります。幹の肥大につれ、第二、第三のというようにコルク形成層が皮層や師部組織内に形成され幹の肥大に対応します。

幹の色が茶色や灰色などくすんだ色なのは、幹の表面が枯死したコルク細胞の層に覆われているからです。

ふだん当たり前のこととして見過ごしていることに興味を持ったのは、さすが「植物好き」さんだなと思いました。

庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-29
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