一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ハエトリグサの葉の運動とジャスモン酸グルコシドについて

質問者:   中学生   N.M.
登録番号4209   登録日:2018-08-22
現在、10株のハエトリグサを育てています。植物であるにもかかわらず、虫をとるために、自ら素早く葉を動かすということに驚きと魅力を感じ、ハエトリグサがどのようにして葉を閉めるのかを調べていますが、分からないでいることがあります。

葉が閉じる仕組みとして、近年の研究(2012)により、獲物が葉の感覚毛にふれると、ジャスモン酸グルコシドが分泌され、閉まるという運動に関与しているということがわかったそうです。(https://wired.jp/2016/02/15/plant-counts-prey/

そもそもハエトリグサの葉の開閉は、オジギソウの運動や気孔の開閉運動と同じく、水分が葉の外側に移動しておこる膨圧運動によるものということが定説のようですが、この膨圧運動をおこすときにジャスモン酸グルコシドが関与しているということなのでしょうか?それとも膨圧運動とは関係がない(葉の開閉運動は膨圧運動ではなかったということ?)のでしょうか?
ジャスモン酸グルコシドが、どのように関与しているのかを教えてください。

よろしくお願いいたします。
N.M.君

質問コーナーヘようこそ。歓迎いたします。回答が大変遅くなってすみません。
ハエトリソ/ジャスモン酸グルコシドの研究をされた東北大学大学院生命科学研究科分子化学生物学専攻天然物ケミカルバイオロジー研究室の上田実教授にお聞きしましたので、私から回答いたします。
ご質問の内容から判断すると、ハエトリソウの葉の運動についてはよく勉強されており、中学生でもかなり高度の知識を持っておられるようですので、基礎的な説明は省いて「ジャスモン酸グルコシドがどのように関与しているか」ということに限って説明します。ヒトの神経細胞で神経電流が流れるには、シナプス周辺で神経伝達物質の濃度が一定の価(閾値=イキチという)を超えると神経電流が流れるのと同じように、ハエトリソウの場合も感覚毛に刺激が加えられると、それによって刺激物質としてのジャスモン酸グルコシドが生じ、刺激の繰り返しによってそれが蓄積されます。そしてその濃度が閾値を超えると、電流が発生して細胞の膨圧運動が起きて葉は閉じます。最新の研究によるとマメ科植物アメリカネムノキの就眠運動(葉の閉鎖)にもジャスモン酸グルコシドが関与することが明らかになっているそうです。この際には運動細胞の収縮を誘導することから、ハエトリソウと共通する細胞収縮機構が関与する可能性が考えられるとのことです。


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-09-05
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