一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ヤツデの気孔は普通の植物の気孔と異なっていますか。

質問者:   その他   ノリコ
登録番号4257   登録日:2018-10-13
私は70歳を超えた主婦です。実は高校生の時、夏休みの宿題に庭にある色々な植物の気孔を観察しました。父が医院を経営していたので、顕微鏡があり、これを用いて、色々1な植物の気孔を観察しました。すると、普通のものは全て二つの孔辺細胞からなる気孔でしたが、ヤツデの葉の気孔だけは二つの細胞からなる気孔ではなく、いくつもの細胞からなる気孔を作っているように私には見えました。そこで、そのように記載して、夏休みの宿題として提出したのですが、担任の先生は「見ました」という判が押してあるだけで、とてもがっかりしました。あれから60年ほど経ちますが、今だにヤツデだけは気孔の形違うのかどうか、ぜひ教えてください。
ノリコ様

このコーナーをご利用下さりありがとうございます。
回答を担当させていただく立場になりましたので、先ずは自分で確認することから始めました。ヤツデの表皮の層をはがすことは難しいので、水絆創膏を用いるレプリカ法を用いました。ヤツデとは別に、近くに生えていたカシ・ゲッケイジュ・サンゴジュなど5種の常緑樹の若い葉の裏面についても調べました。質問を受けて急遽行った限られた材料についての観察の結果ですが、ソラマメ形か半円形の細胞の対になった構造がクッキリと目立つ他の植物の場合と比較して、ヤツデの気孔は一見して違った構造をしているように見えました。
しかし、よく観察すると、ヤツデにおいても間隙を挟むペアーの細胞は存在しており、これを取り巻く細胞の形・配置・大きさが他の植物の場合に比べてかなり違っていることに気づきました。私が観察した材料では、大雑把に言えば、ほぼ同じような形のいくつかの細胞が渦のような配置で孔辺細胞を取り囲んでいるような構造をしておりました。ただし、二つを超える細胞が気孔の間隙を形作っている構造を見つけることができませんでした。
なお、植物学の教科書によると、「気孔装置」は、孔辺細胞・副細胞・近隣細胞で構成され、それらの細胞の協調によって気孔における二酸化炭素・酸素・水蒸気などの吸収や放出の作用が営まれているようですが、ヤツデの場合どの細胞がどのような働きをしているかについてはわかりません。
一方、文献を調べ、また、気孔について研究をしている方の意見も伺いましたが、いくつもの細胞が一つの気孔間隙を形成しているような例は知られていない模様です(気孔の奥に位置する呼吸腔のような空間の場合を除いて)。

以上が私の観察をもとにした回答です。高校生の時に気づかれた小さな事実を大切にしておられることに敬服いたします。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-10-22
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