一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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菊の花が2色になる理由

質問者:   教員   名無しの教師
登録番号4274   登録日:2018-11-10
先日、近所の公園で菊の展示会が行なわれておりました。そこで、「突然変異によって生まれた珍しい菊」として、下記のような特徴を持つ菊が展示されておりました。

その菊の特徴
・白の小花と桃色の小花で構成されている。
・まだらではなく、正面から見てちょうど左半分が白、右半分が桃である。
(わかりにくくて済みません、写真を添付できれば良いのですが……)

その展示会は、近所のおじいさんが趣味で育てた菊を展示したものであったため、出品者の方も「どうしてこのようになったのかはわからない」とのことでした。

まだら模様になるならともかく、きれいに半分半分になっていたのがとても特徴的に感じられ、なぜこのようなことが起こったのかとても疑問でした。そのため、質問させていただきました。
このような花が咲いた理由としては、何が考えられますでしょうか?それともただの偶然の産物なのでしょうか?

よろしくお願いします。
名無しの教師 さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
回答がたいへん遅れて申し訳ありませんでした。ご質問は農研機構・野菜花卉研究部門の棚瀬研究員に伺いました。いろいろお調べ頂いた結果次のような回答を頂きました。
補足しますと、ご存じのようにキク科の花は頭状花序で沢山の小花が集まったものです。その発生過程の詳細は明らかでありませんが、花床上に沢山の小花が形成されますので花床原基の形成時に一部の原基細胞に変異が入り、キメラになったすればこのような現象がおきるのではないかと推察されるものです。また、もしその株につく頭花すべてに同じような変異が現れたとすれば、もっと根源的な段階、例えば株個体の発生初期での染色体構造の変異なども推定しなければならないでしょう。

【棚瀬先生からの回答】
菊の展示会でご覧になった珍しい花について回答します。小花が白と桃色のそれぞれ半分だったとのことですが、このような現象は菊の育種や栽培を大規模で行っている農家や種苗会社、都道府県の試験場などでは時々見られます。お住まいの地域の試験場に菊の専門家の研究員がいらっしゃれば直接お聞きになると詳しく教えてもらえると思います。確かに半分ずつは珍しいですが、例えば1/3が白で2/3が桃色になった花など様々な割合の花が見られます。写真がないので分かりませんが、その花が咲いていた株に他の花は咲いていたでしょうか。同じ株から咲いている花でも色の割合が異なる花があればキメラの可能性が高いです。キメラとは同一の個体内に異なる遺伝子型を持つ細胞が混在している個体です。今回の場合では、花を構成する細胞が分裂する際に本来の細胞由来の部分と変異した細胞由来の部分が一つの花の中に存在しています。変異した細胞は花の色を作る遺伝子が不活化または発現するようになっているため、その変異細胞の割合で小花の色の割合が決まります。原因は詳しく調べないと分かりませんし、まだ解明されていない部分もありますが、細胞分裂の際に染色体の一部が欠損したり、転位因子(トランスポゾン)と呼ばれる染色体DNA上を移動する遺伝子によって引き起こされたりすると考えられています。

棚瀬 幸司(農研機構野菜花き研究部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2018-12-06
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