一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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柑橘類に含まれる成分について

質問者:   自営業   バラ窓
登録番号4305   登録日:2018-12-16
今回、柑橘類の果肉や種に含まれている物質について、お聞きしたく思います。

ミカン科とセンダン科の植物の柑橘(かんきつ)類には、リモニン、ノミリン
、リモネンと言った柑橘類の苦味成分の総称であるリモノイドと呼ばれる物質が含まれていると聞きます。
また柑橘類の苦味成分にはリモノイドのほかにもう⼀つの系列があり、フラバノン配糖体に属すナリンジンも含まれている事が多いと聞きます。
そして苦味の主成分は配糖体状態になり、成熟するにつれて減少すると言った事も聞きます。

さらに柚⼦の種には、⾎管壁を丈夫にするヘスペリジンと言った成分が含まれていると言った事も聞きます。
前置きが長くなりましたが、ここからお聞きします。

リモニン、ノミリン、リモネン、ナリンジン、そしてヘスペリジンの構造式を
見て見たのですが、このうちのリモノイドと呼ばれるリモニン、ノミリン、
リモネンの三つは、ポリフェノール構造の特徴であるベンゼン環に多くの
水酸基が付いている構造ではありませんでした。
この解釈は間違っていないでしょうか?

次の質問に移らせて下さい。
未熟な果実の果⽪などに含まれるナリンジンと柚⼦の種に含まれるヘス
ペリジンの構造なのですが、ベンゼン環に水酸基(OH)についていますが、
複数個付いている状態ではないようです。
ナリンジンやヘスペリジンはポリフェノールに分類して良いのでしょうか?

蛇足、余談なのですが、柑橘の成熟後期にラクトンの水酸基にグルコースが結合したリモノイド配糖体(リモノイドグルコシド)に変化し苦味を呈さない物質になることが分かってきたと言った報告があります。

よく分からないのですが、リモニン、ノミリン、リモネン、ナリンジン、そして
の四種類の物質にも、ラクトン構造になり得る構造があるようですが、配糖体状態になると味覚に変化が出るのが大変面白いです。

またポリフェノールも配糖体状態とアグリコン状態では、水溶性の性質に変化が出て来るとの事で、大変興味深い事だと認識しています。



バラ窓さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は2点と思われますのでそれぞれにお答えいたします。

Q:リモニン、ノミリン、リモネンの三つは、ポリフェノール構造の特徴であるベンゼン環に多くの水酸基が付いている構造ではありませんでした。この解釈は間違っていないでしょうか?
A:お尋ねの3物質はポリフェノールではなく、テルペンの仲間(テルペノイド)です。リモニン、ノミリンのようにフラン構造とラクトン構造をもつもの(フラノラクトン類)をリモノイドと総称しています。リモネンは構造的にモノテルペンに属します。いずれも化学構造の特徴に基づく仕分けで'「解釈」の問題ではありません。

Q:ヘスペリジンの構造なのですが、ベンゼン環に水酸基(OH)についていますが、複数個付いている状態ではないようです。ナリンジンやヘスペリジンはポリフェノールに分類して良いのでしょうか?
A:ナリンジン、ヘスペリジンはそれぞれアグリコンであるナリンゲニン、ヘスペレチンと言うフラバンの7位水酸基に二糖体ラムノシルグルコースが配糖体結合したものです。アグリコンはともにフラボノイドに属するもので総称ポリフェノールに仕分けされます。ナリンゲニンB環3’位の水酸基はメトキシル化されていますが基本的に水酸基の誘導体と見なされます。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-12-25
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