一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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細胞膜では二酸化炭素と窒素を選択して取り込んでいるか

質問者:   会社員   トニオ分子
登録番号4308   登録日:2018-12-18
人工光合成について調べている中で、光合成の原料となる二酸化炭素が細胞内に拡散によって取り込まれている事を知りました。
しかし、大気の組成は窒素や酸素が大半を占めていることから、拡散で二酸化炭素が細胞の中に取り込まれるのであれば、窒素も同時に取込まれると思うのですが、調べた限りでは窒素に関する記述が見つけられませんでした。また、登録番号1712の質問の中でも、「細胞膜で選択的に空気中から二酸化炭素や酸素を取り込んでいるのでしょうか?」と質問されていましたが、「選択的か」という問いには回答が無かったようでしたので、選択的な挙動が細胞膜であるのか疑問が残っています。
今回は、細胞膜での窒素の取扱いについて質問致します。
・光合成の時、窒素は二酸化炭素と一緒に細胞内に取り込まれますか?取り込まれませんか?
・細胞内に取り込まれる場合は、取り込まれた後の窒素はどの様に取り扱われますか。
・取り込まれない場合は、どこ時点でどのようなメカニズムで窒素はふるいにかけられるのでしょうか。
よろしくお願いします。
トニオ分子 様

このコーナーをご利用くださりありがとうございます。
植物の細胞膜には、分子状窒素(N2)を選択的に取りこむ仕組みは備わっていないと思われます。
したがって、大気中の窒素は、二酸化炭素と共に、気孔を通って細胞間の隙間に拡散し、細胞壁と細胞膜を通過して受動的に細胞質に達することになります。この過程では水の層や油の層を通過することになりますが、全体としては平衡関係でもって細胞質が大気につながっている状況であると言えます。窒素と二酸化炭素が対照的なのは、水や油に対する溶解性がけた違い異なること(窒素の場合、溶解度がけた違いに小さい)と、細胞内における代謝の有無(窒素の場合、消費も生成もされない)の二点です。
なお、ある種の原核生物(細菌やシアノバクテリア)には分子状窒素をアンモニアに変換する酵素(ニトロゲナーゼ)が備わっており、、この場合には細胞膜に窒素の輸送体があるかどうかが問題になります。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-12-26
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