一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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果実の色素変化について

質問者:   一般   マグノリア
登録番号4314   登録日:2018-12-23
クロガネモチ、ピラカンサ、万両の果実は晩秋から赤く色づいています。人の目から見て色は変わっていないのに、早春のある時突然鳥が食べ始め、あっという間に果実が全て食べられてしまいます。ずっと不思議でした。登録番号4293の記述「鳥類は、ヒトには見えない紫外線領域の光も色として見ることができ、多くの果実は紫外色の変化で果実の熟れ具合を鳥に伝えています」を見て、同じ赤い果実でも紫外線で見たら違って見えるのではないかと思いました。そうだとしたら何の色素が関係しているのでしょうか。植物の色素と紫外線領域の見え方について書かれている資料がありましたらお教えください。
マグノリアさん

みんなのひろば 植物Q&Aへようこそ。質問を歓迎します。
鳥類が可視域のほかに紫外域にも光感覚能力を持つことは、1990年代以降に解明が進んだようです。
以下の部分は、植物生態学が専門の久米篤博士(九州大学大学院農学研究院教授)に回答をお願いしました。

【久米先生のご回答】
鳥の色覚については、最近、別冊日経サイエンス227「鳥のサイエンス 知られざる生態のなぞを解く」のなかで詳しく解説した記事が掲載されています。鳥類は4タイプの錯体視細胞を持ち、そのうちの一つは370nmに吸収ピークを持ち、主に紫外線のUV-A帯域の波長を吸収します。実は、UV-A域が見えないのは哺乳類だけで、他のほとんどの動物は見ることができます。哺乳類の祖先は、一度夜行性になってしまったため、視覚機能の一部が退化し臭覚を発達させた後、また視覚を使うように進化したことが知られていますが、UV-A域は見えるようにならなかったようです。
植物の紫外線吸収色素は、主にポリフェノールと呼ばれる化学グループのなかのクエルセチンなどのフラボノイド類が代表的で、表皮細胞に多く含まれています。フラボンやアントシアニンもフラボノイド類で、花の色の色素として機能すると同時に様々な植物、たとえば日常食べる野菜のなかにも含まれています。登録番号0391、登録番号2105も参考になると思います。


久米 篤(九州大学大学院農学研究院)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2018-12-24
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