一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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自生の定義

質問者:   その他   植物ウォッチャー
登録番号4339   登録日:2019-01-19
「自生」という用語の定義を教えてください。例えば栽培種が逸出して、人間の手を借りずに自然に繁殖している場合、自生しているといっていいのでしょうか。具体的な例としては、アオモジが信貴山に多く生えていますが、これはこの地域で花卉栽培のために人為的に植栽したものが、逸出したのが始まりではないかと思われますが、現在では自生しているといってもよいのか、それとも栽培種の野生化というべきなのか、正しい用語の使い方がわかりません。また、セイタカアワダチソウなどの外来種でも自生と言っていいのでしょうか。
植物ウォッチャーさま

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。「自生」という用語の定義ということですが、すでに国語辞典(例えば辞苑)などで調べられていることと思います。「自生」は他の厳密な生物学用語とは少し違って、広義にも狭義にも、また、人の考えによって解釈に広がりがあります。生物学辞典(岩波書店)によると、「生物がある地域で、自然のままに、人の保護を受けずに増殖を続けていること」で「野生」と同義としています。
植物の場合は、「ある地域に生育する植物のうち、本来その地域のフロラ(後述)に属する種類。外来植物(例えばヒメジョンのような帰化植物)は日本に自生するとは言わない。」と記載されています。
フロラ(植物相、Flora)というのはある地域(例えば、大島とか、霧ケ峰高原とか、大台ケ原とか言った限定された狭い地域から、日本、カナダ、ギリシャなどの国々)に分布して生育する植物の全種類を指しています。もしその中に外来種が混じっていれば、それも記載されます。ちなみに動物の場合はファウナ(Fauna)と言います。「自生」という言葉を論文など学術的に使用する場合は、その用語の定義を明確にしておくことは必要でしょう。
しかし、日常使う場合は、「生物がある地域で、自然のままに、人の保護を受けずに増殖を続けていること」でいいのではないでしょうか。セイタカアワダチソウは自生しているが、これは日本の「固有種」(生育場所が特定地域に限定されている)ではなく野生化した帰化植物ですといえば明瞭でしょう。同じように、アオモジは本来信貴山地域には自生していなかったが、おそらく栽培種が野生化して、今は自生している、といえばいいのではないでしょうか。
本来日本の固有種ではなかった外来の植物が野生化して帰化植物となり、今では完全に自生している植物はたくさんあります。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-01-24
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