一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の熱感受機構

質問者:   その他   TKM
登録番号4391   登録日:2019-04-09
私は部屋でサキュレントという多肉植物を育てています。冬を越えてもらうために液体肥料を12月頃から挿していましたが肥料はほぼ減ることなく4月を迎えました。4月1週間ほど経った時ふと肥料を目にすると、空になっていました。吸水速度が何かしらの原因で急激に変化したとと捉えインターネットで調べたところ、植物は土壌温度によって吸水速度が変わるという論文を目にしました。吸水速度変化の一因が土壌温度であることはわかりましたが、ここで新たに疑問が生まれました。植物はどのようにして熱を感受しているのか、です。インターネットなどで調べてもあまり出てきませんでした。まだ研究されてない分野なのでしょうか?教えていただけると有難いです。
TKMさん

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
土に植えた植物は、葉の気孔から蒸散する水分を補うために、また、成長のために水分の補給のために、根から水分を吸収しています。吸収する水分が不十分だと、植物はしおれてしまいます。花瓶に挿した切花は、葉から気孔を通して水分が蒸発すると(蒸散といいます)、それを補うために切り口から水を吸収することにより勢いを保つことができます。葉の蒸散速度は、空気中の水蒸気の飽和度と飽和蒸気圧との差に大きく依存しています。気空気中の飽和水蒸気圧は気温が高いほど高く、乾いて気温の高い日は実際の水蒸気圧との差が大きいので、絶好の洗濯日和となります。
質問者の観察結果は、植物の活性変化によるものではなく、室温の変化によって液体肥料容器内部の圧力が変化し、これが原因となって溶液が植木鉢に放出されたと考えられます。圧力が一定のとき、気体の体積Vは絶対温度Tに比例します(シャルルの法則)。摂氏0度は絶対温度約273度であり、摂氏10度、25度の絶対温度度は、それぞれ約283度、約298度となります。容器上部にたまった気体の体積は、摂氏10度のとき5mL なら、摂氏25度では5x298/283=5.27mLとなり、約0.27mLの液体部分が下方に押し出されます。同様に、内部の気体が2倍の10mLなら、約0,54mLの液体が押し出されます。頚部の液体が押し出されて土に触れると、土が乾いていれば、液体は徐々に吸い取られ、代わりに気体が容器内に流入します。内部の気体の量が増大すると、気体体積の温度による変化はますます大きくなります。なお、この他に、頚部の気体は水蒸気で飽和されており、土が乾いていれば水蒸気は徐々に土に吸収されるので、その分だけ気体が流入しますが、この過程で水分が失われる速度はそれほど大きくないでしょう。
容器内の液体が、冬の間は減らずに、4月になって急に減りだしたという観察は、植物のはたらきではなく、室温の変化によると考えられます。おそらく、多肉植物の鉢を置いた部屋は、冬の間は暖房により温度がほぼ一定に保たれていたが、4月になってエアコンを切ると、昼夜の温度差が大きくなり、それに伴い、内部の気体が伸縮して、液体が土に吸収されていったと推察されます。


櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-04-26
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