一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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胴咲き桜

質問者:   高校生   Alpha
登録番号4399   登録日:2019-04-18
生物の観察で、高校近くの桜に、幹から桜が咲いているものを見つけました。調べると、「胴咲き桜」と呼ばれることは分かったのですが、一体どのような原因でそのようになるのかが気になりました。胴咲き桜が発生する原因を教えて下さい。
Alphaさん

本会の質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。対応が遅れて申しわけありません。
ご質問には森林総合研究所の勝木博士から下記の回答文をいただきましたので、ご参考になさってください。

【勝木博士からの回答】
‘染井吉野’を含めた多くのサクラの仲間は、ひとつの冬芽から花あるいは葉のシュートが伸びていきます。花が伸びる芽は花芽、葉が伸びる芽は葉芽と言うこともあります。通常、こうした冬芽は葉の付け根の葉腋と呼ばれる場所に夏季に形成され、翌春に開花あるいは展葉します。

ところが、こうした冬芽からではなく、幹や根などから葉のシュートが直接伸びる場合があります。こうしたシュートを不定枝、伸び始めの芽を不定芽と呼びます。どうして不定芽ができるのかはよく分っていませんが、休眠したままだった潜伏芽が伸びる場合もあります。また、‘染井吉野’では樹冠部にストレスがかかって衰弱すると、幹や根から不定枝がよく伸びることも観察されています。

ご質問の幹から直接花が咲いているように見える現象は、この不定枝によるものです。ただし、よく観察すると、花のシュートは幹から直接伸びているのではなく、必ず前年の葉のシュートについた冬芽(花芽)から伸びています。つまり、前年に幹から直接伸びた不定枝についた葉の葉腋に、花芽がつくられて、翌年に開花するのです。不定枝は長く伸びる場合もありますが、数ミリメートル程度の短い場合もありますので、そうなると直接幹から花が咲いたように見えるのです。

なお、日本植物生理学会のみんなのひろば・植物Q&Aには「幹から咲いている梅の花」(登録番号1928)も掲載されていますので、併せてご覧下さい。



勝木 俊雄(森林総合研究所・多摩森林科学園チーム長(サクラ保全担当))
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2019-05-09
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