一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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おしべの数の違い

質問者:   小学生   りゅう
登録番号4414   登録日:2019-05-07
身近な植物で庭に咲いているサツキやツツジやバラ、公園のタンポポやマツバギク、街路樹のハナミズキのめしべとおしべ、花弁、がくの数を数えてくらべてみました。無数にあって数えきれないものもありました。どうしておしべや花弁やがくに数の違いがあるのでしょうか。
そして、おしべの数が多い利点は受粉しやすいから種子をつくってその植物が絶えないようにすることだと思ったのですが、おしべの数が少ない利点はあるのでしょうか。
りゅう様

植物Q&Aのコーナーを利用して下さりありがとうございます。
植物の茎の先端には、細胞分裂を継続する一群の細胞(茎頂分裂組織)があります。
茎頂分裂組織は葉のつくりながら分裂を続けます。花をつくるのに適した環境になると、この細胞群は花芽になります。花芽は分裂細胞からできており、多くの場合ドーム状をしています。花芽から、花を構成するがく片、花弁、おしべ、めしべなどの花器官がつくられるしくみについてはシロイヌナズナという植物を用いて進んでいます。複数の遺伝子のはたらきの組み合わせによって、ドームの下方から、リング状にがく片ができてくる場所、花弁ができてくる場所、雄蕊ができてくる場所と続き、最後にドームの中心がめしべができてくる場所になることがわかっています。花器官はそれぞれの場所から作られてきますが、その数については、ドームの大きさが関係します。ドームの大きさに関係する遺伝子のはたらきによって、ドームが大きくなると数が増え、小さいと数がへります。植物の種類によって、ドームの大きさやそれぞれの花器官ができてくる場所の大きさがある程度決まっているようです。遺伝子のはたらきが失われることも数に影響します。例えば、花器官の分化に関係する複数の遺伝子のうちの一つのはたらきが失われることで、本来おしべができてくるはずだった遺伝子の組み合わせが花弁をつくる組み合わせになってしまうと、おしべができる場所が花弁ができる場所になってしまい、花弁の数が増えた八重咲なります。     
このように、花器官の変化するしくみについてはだんだん分ってきましたが、「どうして」植物によって花器官の数に違いがあるのか?という質問はとても答えにくい質問です。例えば、双子葉植物では、多くの植物の花弁は4(ダイコン、カブなど)か5(ウメ、ツバキなど)です。
アヤメ、ユリなど単子葉の植物では3の倍数です。ダイコンやカブの花弁が4で、3や5でないのはどうしてかと聞かれたら、祖先から受け継いできた性質と言うしかないように思います。

近縁の植物の中で、おしべがへることがあることが知られています。花粉をはこんでくれる昆虫を誘うために花粉を用いる場合はおしべ数が多く、蜜を使う植物ではおしべの数がへって、蜜を出す腺が発達する傾向があります。おしべをつくるのには、つくるための物質やエネルギーが必要です。おしべをへらすことで、蜜を出す腺を発達するのに物質やエネルギーをふりむけられるのかもしれません。

上の説明の多くの部分は、植物Q&A の登録番号2567, 3781, 3787 に書かれています。小学生には難しいと思いますしたので易しくまとめてみたつもりですが、どうでしょう?わからなかったらまた質問して下さい。花を観察して、植物によってがく片、花弁、おしべ、めしべなどの数に違いがあることに気が付いただけでなく、それからいろいろ考えたことは素晴らしいと思いました。

なお、質問内容に書かれている植物のうち、タンポポは一つの花のように見えますが、多くの花の集まりです。内側の花弁を持たない花を、花弁を持つ花が囲んでいます。また、ハナミズキも花弁のように見えるのは25個くらいの花の集まり全体を包んでいる「 苞葉(ほうよう)」 というものです。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-05-20
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