一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉緑体のグラナの構造

質問者:   教員   マッツ
登録番号4421   登録日:2019-05-13
葉緑体のグラナの膜は、どのようにして接着しているのでしょうか?グラナどうしは接着しやすいように見えます。たとえば、グラナの膜どうしは、同じ接着タンパク質だったりするのでしょうか?チラコイド膜をばらばらにして、再構成する研究などがあればご教示ください。
マッツ 様

この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。
高等植物の葉緑体チラコイド膜は、相互に多重に接着して「グラナ」と呼ばれる構造を作っており、この構造が光エネルギーの捕集とその調節に関係しているものと考えられています。なお、この構造を作るために特化したタンパク質(接着タンパク質)は知られておらず、光合成(特に光化学系II)の機能に関係するタンパク質が膜接着に関与しているものと考えられています。とりわけ、光化学系IIで光捕集の機能を担う「集光性クロロフィルタンパク質複合体(LHC-II)」と呼ばれる膜タンパク質複合体のチラコイド膜表面がこの接着に重要であるようです。また、これに加えて、ストロマのカチオン(Na+やK+)濃度が接着に深く関与していることが知られています。

再構成について言えば、細胞外に取り出されたチラコイド膜を懸垂する溶液のイオン濃度を変化させることで可逆的に接着の程度を操作することが可能です。また、遺伝子工学的にLHC-IIタンパク質遺伝子の発現を抑えたシロイヌナズナにおいてはチラコイド膜の接着が見られず、この材料から得られる膜標品に純化したLHC-IIを取り込ませることでチラコイド膜接着が見られるようになることも実験的に示されているようです。チラコイド膜の接着(Stacking)は昔から光合成研究者の関心ごとであったので、この現象に関して多くの研究がなされて来ました。次の総説(英文)が最近の構造生物学的な研究を踏まえて書かれた短い読み物としてお勧めできます。

(文献)T. Wang ら(2015):Crystal structure of a multilayer packed major light-harvesting complex: Implications for grana stacking in higher plants.
Molecular Plant 7: 916-919.



佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-05-18
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