一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ジャガイモのサポニンの定量方法について

質問者:   会社員   蔵本
登録番号0451   登録日:2005-12-27
はじめまして。いつもこのコーナーを見ていて、勉強させたもらっています。

そこで、質問があります。ジャガイモにはサポニンが含まれていると文献にありましたが、その定量方法について教えていただけないでしょうか。
更に、回収方法も教えていただけたら幸いです。よろしくお願いします。
藏本さん:

大変遅れましたが登録番号0451の回答をお送りします。この回答はサポニン関連物質をご研究されている理化学研究所 村中俊哉先生がご回答下さいました。HPLCによる成分分析は分析対象によって使用カラム、分析条件などが違いますのでご自分の分析対象に最適の条件を見つけだすことが必要と思います。手がかりになる成書が紹介されていますのでご参考にして下さい。


下記の通り、回答いたします。

サポニンは、水と混ぜて振ると泡立つ性質を持つことから、ラテン語の「シャボン」から派生した言葉です。トリテルペノイドあるいはステロイドにオリゴ糖(二個以上の糖がつながったもの)が結合した配糖体の構造をしています。
ジャガイモには、ソラニン、チャコニンなどステロイドアルカロイドにオリゴ糖が結合した配糖体が含有されています。通常、これらの配糖体は「ステロイドアルカロイド配糖体」、あるいは「グリコアルカロイド」と呼ばれ、「ステロイドサポニン」と区別して用いられることが多いようです。広義に、グリコアルカロイドもサポニンに含める場合もありますので、お尋ねの件は、ソラニン、チャコニンなどのことを指しているものと判断し、回答いたします。

まず、植物サンプルの重さを正確に量り取り、乳鉢でサンプルを破砕し溶媒抽出します。サポニン類は極性溶媒に溶けやすいため、メタノールで抽出します。80℃、1時間を3回繰り返し、植物組織からサポニン類を完全に抽出します。抽出後は遠心器を用いたり、濾過するなどして固形分をのぞき、集めた抽出液体はロータリーエバポレーターなどを用いて溶媒を除去します。 溶媒を除去して得られる抽出成分をHPLC(high performance liquid chlomarography: 高速液体クロマトグラフィー)という分析機器を用いて定量します。定量は検量線を作成し行います。ジャガイモに含まれるソラニンは試薬会社(SIGMA)を通じて手に入れることができます。HPLCを行い標品と同じ保持時間に得られるピークの面積値と作成した検 量線から定量を行います。化合物の回収もHPLCを用いて行います。

HPLCを用いた定量分析方法、回収方法を紹介した成書を紹介します。
液クロ武の巻 誰にも聞けなかったHPLC Q&A
日本分析化学会/中村洋/筑波出版会(丸善) 2005
この本はシリーズで5冊出版されており、定量分析や化合物の回収に関しても詳しく解説してあります。

濃度計を用いた定量方法もあります。ジャガイモに含まれるソラニンは、上記の通り、一般名はグリコアルカロイドと呼ばれる化合物群の一種で、その構造の特徴を利用した呈色試薬が幾つかあります。ドラーゲンドルフ試薬やリン・モリブデン酸、p-リン酸、硫酸セリウム-硫酸、硫酸のエタノール溶液などが挙げられます。

 村中 俊哉 (理化学研究所植物科学研究センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
 今関 英雅
回答日:2006-02-02
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