一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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補光と作物育成について

質問者:   その他   岡村 雅広
登録番号0456   登録日:2006-01-06
電気代の高い日本でも、完全制御型の植物工場が15ヶ所、太陽光併用型が10ヶ所、稼動していると新聞に掲載されておりました。

今冬は、気温が低く野菜の育ちが悪いのですが、補光による生育促進の問い合わせが多く、今回下記の実験をしてみようと思います。
植物の専門の方々から、ご意見を聞かせていただければ有難いです。
特に波長・点灯時間についていかがでしょうか?

☆ 実験ランプは、下記の4種類です。

1.高圧ナトリウムランプ(550nm〜700nm)
2.セラミック発光管メタルハライドランプ(400nm〜700nm)
3.カラーランプブルー(UVA〜500nm)
4.植物育成ランプ(4波長)

点灯時間

1・2のは、日の出前2時間〜日の出後1時間
2・3のは、日の入〜日の出(夜間点灯)

照度
1・2で、200〜500LX
2・3で、10 〜50LX

作物は、サラダ菜の予定です。
ハウスは、太陽光併用ハウスで、地域は近畿地区です。

※ 多分、植物の種類・ステージ(育苗期間・生育期間)で影響度が違うと思うのですが・・・・。
岡村 雅広 様

 補光によって植物の生産性を向上させるには、1)比較的弱い光で充分な花芽形成の調節と、2)ご質問にあるような光合成量を補光によって増加させるもの、とがあります。2)は1)に比べ高い照度の光が必要であり、また、スペクトルについても光合成に必要なクロロフィールが吸収するスペクトル範囲{おおよそ400-500 nm(青色)、600-700nm(赤色)が最も効率が高く、500-600 nm (緑色)は青、赤色に比べ効率は低い。400nm以下および700nm以上の紫外光、赤外光は無効}を考慮し、電力消費量の低い光源を選択する必要があると思います。補光による生産性向上をシシトウガラシなど野菜の栽培について、詳しく研究されておられる岡山大学農学部の枡田正治教授から次のようなコメントを頂きましたのでご参考にして下さい。

   
 ご質問の条件の内、点灯時間については、夜間点灯の方が効果を期待できます。日の出前、後、計3時間の照射を行って日長効果を狙ってもレタスではほとんど効果を期待できません。従って補光による効果を得るためには、レタスの光合成能を利用することが必要であり、そのためには、呼吸による損失と光合成による生産とが等しくなる光照度である光補償点に相当する1000ルクス以上にしないと顕著な効果を得ることはできません。そのため、光照度をできるだけ高くし、夜間(暗期)を4時間だけにする(すなわち20時間光照射)、または、暗期をゼロにする、すなわち、連続的に光照射をすれば、顕著に光合成量が増加し、生長促進効果を期待できます。しかし、電力料金との関係が問題になるでしょう。レタスは夜間(暗期)が短くても、(暗期がなくても)育つことができる、連続光耐性をもつ数少ない野菜の一つです。光源としては高圧ナトリウムランプで充分です。ブルーのみのランプは光合成の効率の面からみてあまりお勧めできません。

 枡田 正治(岡山大学農学部作物育苗研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
 浅田 浩二
回答日:2006-01-24
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