一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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黄色いトマトに含まれる成分について

質問者:   自営業   パラ窓
登録番号4726   登録日:2020-05-12
以前から、何度か投稿させて頂いております。目からウロコと言った回答を頂く事が多く勉強になります。
今回、黄色いトマトに含まれる成分、また色が違う、さらには大きさが違うトマトに含まれる成分について、お聞きしたく思います。

まず、黄色いトマトに含まれる成分についてお聞きします。
インターネットなどで調べて見ると、赤いトマトよりは少ないが、リコピンは含まれている。また黄色くなるのは、モンゴルで栽培されているダッタンそばに多く含まれているルチンと言うポリフェノール成分が黄色い色の要因となっていると言った記載を見つけました。この事は本当でしょうか?

次に、マイクロトマト、ミニトマトより、さらに、小さいトマト、それも、赤いタイプには、今後動脈硬化予防に期待されているエクレオサイドAと言う水溶性のサポニンが多く含まれていると、最近テレビ番組で知りました。 
この事は本当でしょうか?
蛇足ですが、以前、今関さんから、ポリフェノールとサポニンの区別は、ピラン環にヒトロキシ基(水酸基)がついているかで、区別していますと言った貴重な回答を頂いた事がありました。大変勉強になりました。
パラ窓 さん

毎度、みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
2つの内容のご質問ですので、それぞれにお答えします。

黄色トマト(完熟したときの色)の色について:
トマト果実の色の大部分はいろいろなカロテノイドの混合物によるとされています。
カロテノイドにはリコペン、カロテン類(α、β、γ-カロテンなど構造の違うたくさんの種類があります)、キサンチン類など色調の違う(共役二重結合の数が異なるため)ものがあり、果実の種類(品種)、熟期によって存在量比が異なるのでさまざまな色調を呈することになります。この点については登録番号1762もご参照下さい。
育種的には、カロテノイド色素の化学的構造を決める遺伝子(T、t)と量を決める遺伝子(R、r)の支配によって黄色~桃色~橙色~赤色などの系統(品種)が出来ると説明されます。ご質問にルチン(フラボノイド)が黄色色素だとの記載があるとされていますが、そのような記載を見つけることは出来ませんでした。ルチン自身は確かに薄黄色の結晶ですが、トマト果実に存在しないとは言えないかも知れませんが、多量に存在したとしても黄色の呈色に寄与することはないと考えられます。おそらくカロテノイドの1つであるルテインの間違い(勘違い?)と思いますが。

エクレオサイドAについて:
「エクレオサイドA」はエスクレオサイドA(esculeoside)の間違いでしょう。鹿児島大学の研究者達が赤色系Cherry tomato (Lycopersicon esculentum var. cerasiforme、日本ではミニトマトと言われています)、桃色系トマト「桃太郎」の完熟果から新規ステロイド系アルカロイドとしてエスクレオサイドAを、赤色系トマトItalian San Marzano(ケチャップの原料)の完熟果からエスクレオサイドBを単離、構造決定したことが2004年に報告されています。ともに配糖体でトマチンの仲間です。したがって、トマト完熟果実にはエスクレオサイドが存在することは事実です。
因みに、ステロイド系アルカロイド類の1つトマチンは未熟果実に含まれていることは知られており、エスクレオサイドA,Bはトマチンから生成されることが推定されています。




今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-05-22
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