一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹木は葉や枝幹はから昆虫が認識するような臭いを出していますか

質問者:   その他   島のドンク
登録番号4729   登録日:2020-05-15
柑橘類を数本育てていますが、これからの時期は
カミキリムシが幹に産卵し樹幹内部を食害し、木が弱ったり
枯れたりの被害が発生します。
カミキリムシは、木の臭いに寄って来るのでしょうか。
また草払機などで、幹に傷つけてしまったら
更に臭いが増大し、カミキリムシなどの昆虫を
呼び寄せることになるのでしょうか。
島のドンク 様

 植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

 森林を散策すると爽快な気分になりますが、これは樹木が出す揮発性の物質(フィトンチッド)によって自立神経が安定することによると言われています。フィトンチッドは、樹木にとっては身を守るために生産されると考えられており、その作用は他の植物の生長阻害、昆虫の忌避、誘引、病害微生物の殺菌など多様です。
 カミキリムシには800以上の種が知られていますが、それぞれのカミキリムシには、ゴマダラカミキリはミカンなど柑橘類、ヤナギ類、クワ、イチジクなど、スギカミキリはスギ、ヒノキなど、ルリカミキリやリンゴカミキリはサクラ、ナシ、リンゴなどというように、特定の寄主植物が決まっています。マツ科の植物を寄主とするカミキリムシはマツノマダラカミキリですが, マツ科植物の出す物質を感知して誘引されます。アカマツとモンタナマツを比較しますと、モンタナマツに強く誘引されることが分かっています。また、伐採した倒木のマツからのアルコール抽出物にも誘引されます。その抽出物中のαーピネン、βーピネン、βーフェランドレンに誘引活性があることがわかりました。その中では、α―ピネンがもっとも強い誘引作用を示します。
 柑橘類の樹木にはゴマダラカミキリが寄ってきて、多大な害をあたえます。その幼虫が幹を食い荒らしますので、テッポウムシとも呼ばれています。柑橘類には芳香を出すものが多く知られています。例えば、レモンの葉には油室があり、D-リモネン、β―ピネン、γーテルピネンが検出されています。キシュウミカンには、β―ピネン、βーカレン、リナロールなどが認められています。マツノマダラカミキリの例から考えて、恐らくゴマダラカミキリはこれらの揮発性物質を感知して、寄主植物に誘引されるものと思われます。
 ゴマダラカミキリによる柑橘類の被害は昔から大きな問題ですので、誘引物質に関する実験があるのではと思い、論文検索サイトでの検索やネットでの検索を試みましたが、まだ見つけられていません。森林総合研究所にもQ&Aのコーナーがありますので、そこで情報が得られるかもしれません。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-05-26
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