一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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インゲン豆の発芽

質問者:   小学生   あっちゃん
登録番号4742   登録日:2020-05-28
インゲン豆の発芽実験をしました。
日光のある所で発芽した茎は緑色でしたが、日光のない所で発芽した茎は白色でした。
それはなぜですか。
水と気温と空気は同じ条件でした。
あっちゃん君

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。あっちゃんがおこなった実験では、「日光のない所」というのは完全な暗黒ですか、それとも日陰という意味ですか。あっちゃんの言う「日光のない所」で発芽させた時、葉(子葉:後で説明)も白色でしたか。他に何か違いはありませんでしたか。
植物の種子が発芽するということは、種子の中に眠っている胚(ハイ)、つまり植物の赤ちゃんが目をさまして、成長を始めるということです。インゲンマメのような植物の胚は、将来の根となる幼根(ヨウコン)、その上部に胚軸(ハイジク)という将来の茎の一番最初の(下部)の部分、そして胚軸の上に二枚の葉が付いています。この二枚の葉はふつうの葉と違って子葉(シヨウ)といい、多くの場合この中にデンプン、タンパク質、脂肪など栄養分をたくわえており、赤ちゃん植物の最初の成長に必要な有機栄養の補給をおこなっています。胚軸の先端、二枚の子葉のついているつけ根のところに幼芽(ヨウガ)があって、これが将来伸びて(成長して)大人の植物体を作るのです。
植物は成長するために、土壌から根によって水分とチッソ、リン、カリウムなどのようないわゆる無機肥料の吸収を行い、空気中の二酸化炭素と根から吸収した水とを材料にしてデンプンを合成します。これを「光合成(コウゴウセイ)と言います。デンプンから必要な他の有機物質を合成していきます。
このように、植物は「光合成」をして成長に必要な栄養分をまかなっており、これは動物にはない働きです。植物が光合成を行うには、主に葉の細胞の中にある葉緑体(ヨウリョクタイ)という小さな構造の中にある葉緑素(ヨウリョクソ、クロロフィル)という複雑な物質が必要です。植物が緑色をしているのはこの葉緑素があるからです。葉緑素は植物に光が当たると合成されていきます。
種子の発芽はふつうだと土壌の中で起きます。土壌の中は光がありませんから、早く光に到達して光合成が出来るように、まず茎(胚軸)を伸ばします。光がないところで発芽させると、土壌の中でなくても葉緑素ができていない、茎の伸びた芽生え(もやし)が育つのがふつうです。食卓に出ることもある、「もやし」というのはモヤシマメやダイズを暗いところで発芽させて作るのです。あっちゃんが「日光のない」ところで発芽させたのは、もやしを作ったようなものです。
完全に暗いところで発芽させると、発芽した幼植物は葉緑素ができないだけでなく、茎も細く長くなり、子葉は閉じたままです。多くの他の植物でも同じです。


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-05-29
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