一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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古材の腐朽

質問者:   一般   yo ba
登録番号4790   登録日:2020-07-05
山や公園で見かける倒木や、古材は腐朽して崩れる時に、その部分が、数ミリから20ミリ程度の、小さくブロック状になるのは何故ですか?

これだけの質問では分かりにくいかも知れません、若し必要なら写真をお送りします。

近々に、「年輪は樹木の履歴書」というタイトルで講演をすることになっています。その一環としたい。

写真1

写真1

写真2

写真2

写真3

写真3

yo ba 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

 樹木の幹の横断しますと、多くの樹木で年輪を見ることができます。色の薄い部分は春先から夏にかけて成長が活発な時期に作られた木部で、細胞壁の薄い、大きな細胞からできています(早材)。色の濃い輪は秋から冬季に作られた木部細胞からできていますが、その細胞は細胞壁が厚く、小さな細胞からできています(晩材)。細胞密度が高いので、その部分が色の濃い輪になります。また、年輪の他にも、樹木の中心から放射状の線を見ることができます。放射組織という縦に平たいシート状の組織の断面です。放射組織の細胞は放射方向に長い柔細胞で、物質の通道や貯蔵に働いています。木材中に占める容積の割合は平均して約20%ということですので、かなりの部分を占めています。
 ご質問の件ですが、写真を拝見しますと亀裂が年輪や放射組織に沿っておきているように見えます。早材と晩材では水分含量が大きく異なります。また、放射組織と近接する木部組織との間でも水分含量が異なります。樹木が次第に乾燥するにしたがって、組織の収縮率が異なりますので、それが物理的ストレスになって亀裂が入ったのではないでしょうか。
 最後の写真(写真3)はさらに組織の崩壊が進んでいるように見受けられます。木材の構造的崩壊には、褐色腐朽菌など菌類が大きな役割を担っていることが知られています。木材の形状を維持する上で細胞壁が重要ですが、褐色腐朽菌は細胞壁の主要構成成分であるセルロースやヘミセルロースを分解、利用することができますので、構造的崩壊の原因になります。褐色腐朽菌が感染した場合、晩材が侵入を阻止する壁になるという記載がありますので、晩材より分解しやすい早材の部分を先に分解することによって、より細かな断片化がおきるではと考えました。
 文献が見当たりませんでしたので、私見です。



庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-07-18
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