一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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イシクラゲは、アルカリ性ですか?

質問者:   一般   うもも
登録番号4813   登録日:2020-07-29
お世話になります。
小学生の子供と一緒に、増え続けるイシクラゲを観察しています。
イシクラゲは、アルカリ土壌に多く現れるとありました。
もしかしたら、イシクラゲがアルカリ土壌にさせているのでは。と考えました。
年々増える我が家のイシクラゲを、薬品などで駆除せず、畑に苦土石灰のように混ぜて使えないか考えています。
うもも様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
イシクラゲは厄介な生物ですね。イシクラゲは以前は藍藻類とよばれた藻類の一種、つまり植物として扱われていました。しかし、現在藍藻類はシアノバクテリアという細菌の仲間であることがわかっています。生物の種類は大きく分けて、細胞に核を持つ真核生物(多くの生物がそうです)と核を持たない原核生物(細菌・古細菌の仲間)に分けられます。細菌というと一個の細胞が別々にあるように思いますが、たくさんの細胞があつまって、多細胞体のようになっているものもあります(登録番号1788参照)。
イシクラゲ(Nostoc commune )はネンジュモの仲間でアシツキ(カモガワノリ)、髪菜と共に日本、中国などアジア諸国では食用に供されます。ゼリー状の塊の中を顕微鏡などで観ると、細胞が数珠のようにつながった構造が見られます。イシクラゲは世界中に分布しており、とてもタフな生物です。陸上では砂漠でも極地でも生息でき、舗装された場所や砂礫でも条件さえ揃えば繁殖します。イシクラゲはマメ科の植物のように窒素固定ができますので、窒素肥料を必要としません。また、光合成もできます。乾燥が進むとか、環境条件が悪くなると乾いた海苔のようになり休眠状態に入ります。この状態だと高温凍結にも耐えられます。水分が供給されるとまた元に戻ります。
さて、ご質問についてですが、イシクラゲがアルカリ土壌に多く現れるという論文を見ることはできませんでした。イシクラゲの研究は最近あちこちで見られるようになり、培養によって食品、医薬品などに利用しようという試みもあります。そういう報告での培養条件を見ますと、成長(繁殖)にはpHが中性付近が良いこと、光合成活動はpH3(強い酸性)からpH11(強いアルカリ性)までの間であまり影響はないようです。つまり、かなりタフですね。また、イシクラゲ自体が土壌をアルカリ化しているかどうかはわかりませんが、土壌のpHを変えるほど多量にアルカリ性物質を分泌しているとは考えられません。
イシクラゲを土壌に混ぜたらどうなるかはやってみないとわかりませんが、きっと生き延びて条件が揃えば、すぐ繁殖を始めるでしょうね。イシクラゲを除去するにはいろいろな方法が提案されていますが、繁殖に不向きな環境条件にするのがいいのではないでしょうか。土壌の水はけと通気を良くし、日陰にしないなど。ある報告によると、ベーキング・パウダー(主成分は重曹)を直接ふりかけるとイシクラゲは死ぬということです。重曹は弱酸性ですが、上述のようにそれがイシクラゲを殺す原因ではないと思います。ただ、この除去方法は一時的なようです。パウダーを水溶液にして処理する仕方もあります。英語ですが、「how to use baking soda to kill lawn algae」と入力して検索してください。


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-08-10
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