一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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水耕と土耕における根の違い

質問者:   会社員   ただし
登録番号4836   登録日:2020-08-15
はじめまして。
表題の通り、水耕で発生する根と、土耕で発生する根に違いがあるのかお伺いしたいです。
趣味で園芸を行なっておりますが、海外から輸入した未発根の株の発根管理に関して、よく水耕で発根させたものを土に移すと失敗したと耳にします。
そこで、両者における根の性質について教えていただきたいです。また、違いがある場合、それぞれの根から性質の移行は可能なのでしょうか。それとも、環境に適した根が別途発根する必要があるのでしょうか。
趣味で始めた園芸ですが、最近ではその生態に非常に興味が湧き、より植物のことを深く知りたいと思うようになりました。ご回答お待ちしております。
ただし様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問の内容はどちらかというと栽培に関係したことなので、的確な回答はできないかもしれませんが、大雑把に一般的なことを申し上げます。水耕と土壌栽培とでは確かに根に違いはあります。しかし、植物の種類、齢、水耕の条件(培地の組成、酸素の供給、栽培密度他)、土壌栽培の条件(土壌培地の種類、肥料、潅水他)などによってかなりの差があります。一般に言えることは多分、水耕の場合は土壌栽培に比べて根の大きさ(長さや、二次、三次根の発達の度合)が小さいことです。解剖学的には水耕植物の根は空隙(通気組織)が大きいとか、リグニンやズベリンによって皮層組織の細胞壁の肥厚があるとかの知見がありますが、根の主な機能は吸水と養分摂取で、この機能はどのように栽培しても変わりません。土壌に育つ植物はできるだけ根系を発達させようとします。根の生育が悪いと地上部の成長も悪いことはご存知だと思います。それに対して水耕では根は直接水に接していますので、吸水、養分摂取は土壌栽培に較べて容易です。したがってそれほど根系を発達させる必要がなくなります。根系をどんどん大きくするということはそれだけ根の成長にエネルギーを使う必要があるわけです。水耕ではその必要がありませんので、エネルギーを地上部の成長や果実の成長に回せるわけです。しかし、水耕では酸素の供給が問題(前述の通気組織の発達も関係している)になりますので気瀑などの工夫も必要ですし、雑菌の繁殖などを防ぐ必要もあります。
水耕にはいろいろな方法も考えられていて、完全に根系を水溶液の中で育てる場合や、保水性の高いシートを使う場合など植物によって異なります。土壌栽培でも栽培土の組成が工夫されている場合もありますので、一概に決め付けることはできないかもしれません。なお、水耕した植物を土壌に移すことは可能です。ただ、移植の時にどれだけ根系を物理的に傷めないかということも考える必要があるでしょう。そして、土壌の性質も関係すると思います。給水の問題もあります。いずれにしろ移植した植物が茎根の基部から不定根を形成して新たに根系を広げていくことはあるでしょう。そういう意味では、不定根を形成しやすい植物は移植も容易かもしれません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-08-21
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