一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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炭酸同化を実感できる生徒実験の組み立てについて

質問者:   教員   なお
登録番号4847   登録日:2020-08-22
生徒が,光合成と純生産量,炭素の循環,二酸化炭素が限定要因になること,などについて実感できる実験を組み立てたいと考えています。
いま考えているのは,カイワレ大根を開放した試験管で育てた場合と,ゴム栓で口を塞いで,パラフィルムで密閉し,新たな二酸化炭素が外から供給されない場合を比較することです。生長量(全体の長さや乾燥重量)に差が出るのではないかと考えています。
しかし,これは誰もが考えそうな実験だと思うのですが,似た実験例を発見することができませんでした。これには何か理由があるのでしょうか?
また,炭酸同化を学校の実験室レベルで実感するのに適した方法や材料(クロレラなどの単細胞の藻類はどうか?)がもしあればぜひご教授いただけたらと思います。
よろしくお願いします。
なお 様

本コーナーをご利用いただきありがとうございます。

二組の試験管でカイワレ大根を育て、一方は口を開いたたまま、他方は口を閉じて新たな二酸化炭素の供給を断ち、両者での生長の比較から光合成による植物の成長への二酸化炭素の必要性を示そうと考えておられるようですね。ところで、植物体の生長は(短期的には)水分の吸収だけでもおこりますので、光合成による純生産量を見積もるには多少面倒さがありますが乾燥重量の測定が不可欠となりますね。この実験系の問題点は、予想されている二酸化炭素の濃度差以外に、同じように植物体の生長に影響を与える温度や湿度などの条件の違いが二組の試験管の間で生じる可能性があることだと思います。問題点を避けるために試験管全体を一定温度の水槽に浸しておくとか、温度・湿度の問題を克服するために実験材料としてご指摘のように水中で育つクロレラを用いるなどの工夫が有効かも知れません。実験例が見つかりにくいのは、ある程度の長期にわたる生長(光合成純生産量)を絡める実験系であることに難しさがあるからかも知れません。

二酸化炭素へのこだわりが強いようにお見受けしますが、二酸化炭素などの気体は目に見えないので小学生には扱いに難し面があると思います。しかし、実験材料として水草などを選択し、気泡の放出で光合成速度を見積もるような実験系にすると、外液を煮沸したり、石灰や水酸化カリウム(ナトリウム)などやpHの操作などにより反応系から二酸化炭素を取り除いたり、逆に、重曹などの炭素化合物を加えることにより二酸化炭素の供給量を増やすことも可能ですので、これらの手法を考慮に入れて光合成への二酸化炭素の影響を調べる実験系の組み立てを工夫して見られることをお勧めします。インターネット上で見つけた一例を示させていただきます(ymorita.la.coocan.jp/senebie.htm)。

なお、デンプンを蓄積する植物を使って二酸化炭素から作られる光合成産物をヨードで検出する古典的な実験は、光合成への反応への光の必要性を明瞭に示すものだと思います。実験材料(デンプン葉)の選択、アルミ箔を付けるなどの準備作業、天候の恵みの問題など、指導者への負担が多いかも知れませんが、要領を身に付けられると児童には非常に理解しやすい実験になるのではないかと思います。穀物デンプンの染色や有機溶媒による光合成色素の抽出などの実験と組み合わせて企画されると面白いのではないでしょうか。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-08-28
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