一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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森林の成長と物質収支

質問者:   教員   けろりん
登録番号4863   登録日:2020-09-03
いつも参考にさせていただいています。

森林の物質収支についてお尋ねします。
森林が成長するときに、25年くらいは総生産量が増加し、その後、急激に少し減少してから、緩やかに減少していくグラフが教科書には載っています。純生産量も同じような傾向で、25年目くらいに小さなピークが出る形になっています。
このピークが出来る理由=急激な生産量の減少は何によるのでしょうか。
図説や問題集の解説、ネット等で調べても明確な答えが得られず、質問させていただきました。
よろしくお願いいたします。
けろりん 様

このコーナーをご利用いただきありがとうございます。ご質問には森林総合研究所の田中憲蔵博士から下記の回答文を頂戴しましたので参考になさってください。

【田中博士からの回答】
森林の生産量が経年変動する要因は完全には分かっていませんが、森林の総葉量の変化と密接に関連していると考えられています。
総葉量は、森林の成長とともに増加し、ある年齢で頭打ちになります。これは樹木間の空間に限界があり、周囲の樹木の枝と重なり合うことで一定以上葉を増やせなくなるためです。時間が経過すると、葉同士の重なりが増加し、光不足が生じると葉が枯れていきます。この枯れあがりにより葉量は減少し、それに伴い生産量も減少します。これがご質問にあった純生産にピークができる要因と考えられます。さらに時間が経過すると、葉量はほぼ一定に達して純生産量は安定しますが、幹などの非同化部分の成長が進み、光合成をしない器官の割合は増えていきます。つまり、非同化部分の呼吸量は増え続けるため、森林の純生産量はピークの後も徐々に低下していくことになります。
田中 憲蔵(森林総合研究所の植物生態研究領域物質生産研究室・主任研究員)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2020-09-10
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