一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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テイカカズラの花の構造

質問者:   大学院生   ワレモコウ
登録番号4869   登録日:2020-09-07
テイカカズラの花の構造について不思議に思ったので質問させていただきます。花の中心を見ると三角錐状の山型になっており、これはどうやら雄しべが集まったもののようで、内側に葯があることが確認できます。そして雌しべの先(柱頭ではない)部分との間に花粉が溜まっているようです。雄しべの先はぴったりと合着しています。

質問1
ポリネーターは口吻の長いスズメガ等であり、雄しべの根元のわずかな隙間から口吻を差し込むとの記述を見たのですが、それでは花粉の大部分が無駄になってしまうように思います。雄しべの先を合着させるメリットは何かあるのでしょうか。専用のポリネーターを雇うためなら長い花冠だけで事足りるようにも思えるのですが……。

質問2
口吻の出し入れ時に花粉が付着するとの記述を見ました。入れるときに花粉が口吻に付着すると同花受粉、抜くときに付着するなら他花受粉をすることになると思うのですが、口吻の伸ばし方、巻き方、花の構造等から口吻を抜くときにより付着しやすくなる可能性はあるでしょうか。

質問3
花の数に対して果実の数が非常に少ないことを考えると、虫が来なかった場合に同花受粉をする機構は無いように思いますが、花の構造上の問題でしょうか。それとも自家不和合性が有るのでしょうか。

長くなってしまいましたが、宜しくお願い致します。
ワレモコウ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問に対して、このことに関連する事柄を研究されている、京都大学大学院 人間・環境学研究科の加藤 真教授から以下のような回答をいただきました。

【加藤先生のご回答】
質問1
テイカカズラのポリネーターはシャクガ、メイガ、ヤガなどのガで、それらの口吻は非常に長く、細いです。口吻が差し込まれる花の吸蜜孔は、毛が多く狭い隙間になっていて、そこに花粉が落ちてきて、そこに挿入されてくるガの口吻に花粉が付くようになっています。この複雑な花の構造は、ガの細い口吻に確実に花粉を付けるためのものだと考えられます。

質問2
葯の裂開と柱頭の成熟のタイミングをずらせることによって、同花受粉が起りにくいようになっていると考えられます。

質問3
花の数に比して果実の数が少ない理由は、有効な送粉が十分に行われなかった可能性と、送粉は行われたのに植物が果実を間引いた可能性の二つがあります。キョウチクトウ科の植物は種子がたくさんつまった大きな果実をつけるものが多く、後者の理由で果実の数が少ないことが多そうです。
加藤 真(京都大学大学院 人間・環境学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2020-09-30
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