一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の呼吸

質問者:   大学院生   とれじゃー
登録番号4872   登録日:2020-09-10
こんにちは。
近年温暖化の影響で、二酸化炭素の排出量を削減しようという話が多く、その流れで人間は呼吸によって1人あたり1年間で320kgの二酸化炭素を出していると知りました。
植物も人間と同じように呼吸をすると思いますが、例えば20mくらいのケヤキの木だと具体的にどのくらいの二酸化炭素を出しているのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
とれじゃー 様

このコーナーをご利用いただきありがとうございます。

求められているのは、「成長した20mぐらいの高さのケヤキの個体が1年間に放出する二酸化炭素量」と理解します。この値は、昼間に営まれる光合成による吸収量と昼夜に関わらず営まれる呼吸による放出量の差として決まり、差引勘定としてのこの値は大まかには植物体の生長量(または衰退量)に対応していると言えます。グローバルな視点では、落葉の運命についても考慮に入れる必要があるか思います。

さて、樹木個体が1年間に放出する二酸化炭素量を知るには、個体全体について直接測定することが出来ると良いのですが、20mにも及ぶ大樹について1年間もの長期にわたって測定することはなかなか難しいことのように思えます。別の方法はサンプリング法ですね。樹体を構成する代表的な部分ごとのサンプルを採取し、サンプルについて実験室内でいろいろな条件下で活性を測定し、その測定値を基にして、個体全体についての総和として、昼夜・季節など環境変化の条件のすべてを考慮に入れ、望んでいる値を計算により見積もる作業になりますね。サンプリングの方法としては、植物の幹や根に直接測定用のチャンバーを設置するなど、いろいろなやり方もあるかと思います。先ずは1本の個体にこだわらず、樹林帯全体について二酸化炭素の放出や吸収を測定する(見積もる)ことから始め、全体を構成する各個体の寄与を見積もるやり方もあり得るかと思います。

お望みの値を見積もるのは容易とは思えませんが、地球規模での議論をするには不可欠な基礎データーですので、関連する分野では信頼できる数値があるのだと思います。少し論文などを探られ、その筋の専門家に当たられることをお勧めします。たまたま見付けたもので、視点は幾分異なっていますが、以下の論文が入り口となるヒントを与えてくれるかも知れません。

(論文)Ito, A. (2020). Constraining size-dependence of vegetation respiration rates. Scientific Reports. 10:4304. doi:10.1038/s41598-020-61239-0
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-09-24
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