一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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彼岸花の色変化?

質問者:   会社員   ひがし
登録番号4888   登録日:2020-09-26
質問させて頂きます。
10年以上前から、赤色の彼岸花を等間隔に、あぜ道に植えていました。
ここ数年、少しずつ白色の彼岸花に変わってきており、今年はほぼ全て白色の彼岸花になってしまいました。
少し離れたところに、白色の彼岸花は、あったものの、白色彼岸花が、植えてもいない幅の狭いあぜ道に、等間隔に増殖したとは、考えられず、驚いています。
他の質問にも、ここ数年白色の彼岸花を見る機会が、多くなっているとありましたが、私としては、変異のように思えて仕方ありません。
原因には、何かあるのでしょうか?
ひがし様

 植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
 ヒガンバナは11本の染色体が半数型(n)の染色体の組が3組で構成されている3倍体(3n)です。3倍体である種なしスイカと同じように交雑ができず、種子もできない不稔性です。繁殖は、鱗茎や地下茎によって行われます。
 突然変異がおきたのではというご質問ですが、シロバナヒガンバナがヒガンバナから遺伝子突然変異で生ずる可能性は極めて低いと思われます。なぜなら、花が白色になるような遺伝子突然変異がおきたとしても、遺伝子の組が3組ありますので、他の2組の対立遺伝子が正常であれば白色の性質は現れません。3組の同じ遺伝子が突然変異をおこす確率は極めて低いと思われます。また、交雑ができませんので、白色になるように変異した遺伝子が、交雑によって子孫で重なる(ホモ接合状態になる)可能性もありません(詳しくは植物Q&Aの登録番号3374 をご覧下さい)。さらに、等間隔で植えたヒガンバナすべてで同様な遺伝子変異がおきる可能性はほとんどないと思われます。
 それでは、ヒガンバナとシロバナヒガンバナが置き換わるようなことがどうしておきたかということですが、そのような事例を扱った文献を見つけられませんでしたのでわかりません。以下は今までの知見から考えた可能性です。
 ヒガンバナの花の発育は温度の影響を受けます。ある発育段階までは、比較的高い温度で発育が進行しますが、その段階に達しますとそれまで発育を促進していた温度ではかえって発育が抑制され、適温はより低い温度になります(詳しくは登録番号1082をご覧下さい)。最近の気温の上昇が花の発育を抑制しているのかもしれません。一方、シロバナヒガンバナは日本では九州で広く分布しています。暖かい地域に分布する植物ですので、最近庭などに植栽されることもあって、分布を広げていると思われます。気温の影響を考えた場合は、あぜ道だけでなく地域全般で同様なことが見られると思われます。どうでしょうか?気温など環境要因の影響の他、ヒガンバナとシロバナヒガンバナとの間の相互作用も調べる必要がありそうです。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-10-17
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