一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の挿し芽がうまくいかない原因

質問者:   高校生   木
登録番号4894   登録日:2020-10-01
私は今、学校の課題研究で挿し芽において条件を変えた発根状況を調べています。植物はポトスを使っており、ポトスは直射日光の当たらない場所で土が乾いてきたら水をあげるようにしています。気温や湿度は調べ、20度以上の室内に置いています。また、挿し芽をする際にルートンという発根促進剤をつけています。その状態で観察すると1週間後くらいには葉が黄色くなったり、根が黒くなったりしてしまいます。根も生えてきません。何が原因なのでしょうか。。改善できることがあればアドバイスをいただきたいです。
木 さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
私たちは植物の「生きる」仕組みを科学的に追究する研究者たちの集まりです。
したがって、挿し芽、挿し木、接ぎ木などでは、どんな仕組みで根が出て1つの個体になるか、接ぎ木をしたときにどんな仕組みで別々の個体から取った挿し穂、台木が接続して1つの個体となるか、と言った課題の下でいろいろな手段を用いてそれらの仕組みを追究する研究者はいますが、個々の植物種(園芸種を含め)で挿し木、接ぎ木が成功しないのは何故か、と言った技術的な側面を追究している研究者はおらず、残念ながら適格なお答えをすることが出来ません。
ポトスは家庭園芸の対象として広く利用されている植物ですから愛好者もたくさんいると思い、私もWeb上で調べたところたくさんの「育て方」や「殖やし方」を記載したものがありました。そこでこれらネット情報に基づいた知識だけで提案を含めてお答えします。
木さんが試みている方法が、ご質問の内容だけでははっきりとつかめませんので以下のような前提をおきました。
「挿し芽において条件を変えた発根状況を調べています」とありますが「調べる発根状況」とは「発根の有無」だけなのか「発根数の多寡」も含めるのか、また「変える条件」は何か、がはっきりしません。そこで、「発根数によって評価する」との前提にします。変える条件は任意です。
次に試験材料の問題です。まず試験材料は土に栽培していた母体植物から「挿し芽」を取るものと判断しました。この挿し芽とは母体植物のつるの先端部を切り取ったものでしょう。葉の数(節の数と同じになるはず)はみな同じ(挿し芽の長さがほぼ同じ)ですね。そうでないと、違った条件で得られる発根状況を比較評価できません。これに関し、先端部の数節は発根がしにくいとの記載がありました。
「挿し芽」を土に挿したのか、発根状況が観察しやすいように水に挿したのかも分かりません。この情報はかなり重要です。ポトスの栽培、繁殖は比較的容易なのですが、ポトスには妙な性質が1つあるようです。長年、土に栽培していた植物母体から取った「挿し芽」は土に挿したときには普通に発根するが、水に挿すと発根し難い。逆に水栽培の母体植物から切り取った「挿し芽」は水に挿せば発根するが、土に挿すと発根し難い、と言う性質です。その原因は今のところ分かりません。おそらく母体のおかれた環境との違いが挿し芽の発根に影響するものと考えられます。木さんのこれまでの試験はどのようにされていたのでしょうか。
また、試験の目的が「環境条件が発根にどのように影響するか」ですから、たくさんの挿し芽を扱って統計的に結果を処理することになります。そこで、提案です。試験材料に使う「挿し芽」は蔓状の茎から、葉1枚だけをつけた短い茎切片とすることです。これは増殖の方法として使用されています。つるの先端部に近い部分は除きます。こうすればたくさんの試験材料が簡単に得られます。そして、これらの試験材料を母体植物と同様の培地に挿して観察することです。出来るだけ単純にするには、「水栽培の母体植物から葉1枚をつけた短い茎切片を切り出し、水に挿しておいて結果を観察することです」。適当なサイズのプラスティックカップでも使えば、水の交換も簡単ですし、違った挿し芽を違った環境条件に同時におくことも出来、発根状況の観察も容易です。同じ環境におく挿し芽は少なくとも5本は必要でしょう。
いろいろ事前の作戦を考えて試験を繰り返し、結果を評価して下さい。期待しています。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-10-16
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