一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の根の色の変化について

質問者:   会社員   くしなし
登録番号4924   登録日:2020-11-25
いつも皆様の質問等を参考にさせて頂いております。
芝生管理の勉強をしている者ですが、今回は初めての質問で的外れかもしれませんがよろしくお願いします。

芝は短く刈り込まれている為か、常にストレスが掛かった状態の根は茶褐色になりますが、回復すると根が次第に白くなっていくように感じます。これは定期的に芝を抜き取って根を観察すると変化に気づくのですが、一度茶褐色になった根が色が抜けたように白くなるのはどうしてなのか不思議でなりません。

以前、芝の根の褐色のもとは抗酸化物質のポリフェノールだと説明を受けたことがあります。
そのため弱っている根は抗酸化物質のポリフェノールが活性酸素をを抑えるために増えているからポリフェノールの色素の影響で褐色が目立ち、根が回復していくと活性酸素が減少して抗酸化物質も大量に必要なくなるからポリフェノールが減少して白くなるのかと思っていましたが、そうすると一度増えたポリフェノールはどうやってなくなっていくのでしょうか。この考え方が合っているのかも判らないのですが、ご専門の先生方に根の色の変化について教えて頂けると幸いです。
くしなし様

みんなのひろば、植物Q&Aへようこそ。
回答は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構でイネの根の研究をしている宇賀優作博士(農学)にお願いし、大川安信(元同研究機構研究員)博士(農学)に担当者櫻井の意見も加えてまとめました。

芝は、一般的に、地表表面を密に覆うイネ科植物を広く指す用語で、ノシバ、コウライシバ属などが含まれます。シバ属にはノシバという和名の植物種もあり(学名は:Zoysia japonica Steud)、これも芝として利用されるが、シバ属以外の植物にも「芝」として使われるものは多くあります。ここでは、シバ属も含めたイネ科の根について生理的説明を含めて解説します。(参考:イネ科に属する植物は極めて多く、ある分類法によればイネ科は約700属の種からなり、イネとシバはともにイネ科だが、属のレベルで別々のグループに入るという)。
さて、シバの新しい根は、イネで言えば、葉と根の分化はファイトマー(維管束植物の地上部の単位で、茎、葉、芽などからなる)で連動しています。シュート(英: Shoot)とは、茎とその上にできる多数の葉からなる単位であり、維管束植物の地上部をなす主要器官です。
分蘖(ぶんげつ)とはイネ科などの植物の根元付近から新芽が伸びて、シュートとして株分かれする事を指し、古い分げつと次の分げつが成長する間のタイミングでは、成熟した根しかないので全体的に老化し茶褐色に見えるでしょう。新しい分げつが出るタイミングで新しい根がどんどん伸びてきて白い根が増えます。イネの場合、分げつ形成時にこの現象が繰り返されます。イネの栽培では実用化されていませんが、もし今回の芝刈りのように、イネで分げつを刈り取りすると、土壌に肥料分が十分にあれば、次の分げつが出る際には新しい白い根が出ます。芝でも地上部をカットしたら、新しく芽が再生するときに、肥料分が十分あり、シュートと連動して次の新しい根が生えれば、白く見えるということだと思います。
ひげ根の色は白色が普通だと思いますが、質問のように、場合により古い根が茶褐色になるのはなぜかについて考えてみます。一説として、FeやMnの化合物は土壌中で溶解度が低いが、有機物を多く含む土壌では、有機酸などによって土壌水に溶けやすくなっており、蒸散流に連動して芝の根の表面に達し、地表付近ではO2濃度が高いので、溶解度の低い酸化型の着色した無機物となり、根の表面に沈着するという説が見られました。この考えがどの程度広く当てはまるかについては判断しかねますが、目に留まったので一応紹介します。
宇賀 優作/大川 安信(農業・食品産業技術総合研究機構/元農業・食品産業技術総合研究機構)

櫻井 英博
回答日:2020-12-16
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