一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹木

質問者:   高校生   りょうすけ
登録番号4944   登録日:2020-12-21
私は北海道にすんでいます。何度もたてつづけ質問になってしまいすみません。
毎年不安になることがもうひとつあって、
植林してる木々が秋に落葉し、雪が降るまでに
気温が高い日などがあると、春と間違って芽吹いてしまいそうになったり、実際に芽吹いてしまった木が数種類ありました
(オオバクロモジ、ハウチワカエデ、ヒロハツリバナ、ケヤマハンノキ、等…)
この芽吹いてしまった冬芽は、もちろんのこと、
冬になるにつれ霜がおりたり、低温になったり、
雪がふったりと、芽吹いてしまった葉も枯れると思うのですがこの芽は来年、どうなってしまうのか、また芽吹くのでしょうか、すみませんが何か分かることがありましたら回答よろしくお願いします。
りょうすけ君

りょうすけ君は樹木に大変興味と関心があるようですね。私共にとって心強い限りです。樹木の示すいろいろな性質を観察することは大切なことですが、樹木に直接働きかけて(実験をして)樹木がどんな反応(応答)をするかを観察すると、さらに興味が増してくるとは思います。
このQ&A登録番号4942でも説明したように木々のすべてが同じ生育段階にあるとは限りません。冬芽は、形成されてから休眠状態に入るので休眠が破られなければ気温が上がっても芽吹きを始めません。1本の木に着目して、ある日(例えば11月とか12月のある日)における冬芽の休眠状態は全部が同じ程度とは限りません。休眠の深い芽もあれば、比較的浅いものもあるでしょう。それは、冬芽形成の始まりはすべての芽で同時では無く、休眠芽(完全な休眠状態)になるためには時間がかかるからです。秋から冬にかけて1日の平均気温が次第に低下していくこと、日照時間が短くなっていくことなどでアブシシン酸という植物ホルモンが合成されてきて、それが休眠を起こす原因となっています。休眠芽については、登録番号1928, 3600, 4399, 4503などを参考にして下さい。休眠芽の休眠は気温が上がってくると別の植物ホルモン、ジベレリンが増加して破られはじめます。つまり環境として気温の低下、上昇が重要な要素となっています。休眠が破られた芽は気温が低い間は発芽しませんが、気温が上昇すると発芽つまり芽吹きし始めます。休眠の破壊も全部の休眠芽で同時に起こるものではありません。暖冬の年では、休眠芽になりきらなかった芽、あるいはすでに休眠から覚めていた芽は生長をはじめます。暖冬の年には、季節外れの花が咲いたり、芽吹きがおきたりすることはごく自然のことです。特に樹木では春になって気温があがっても休眠芽のすべてが発芽するとは限りません。潜伏芽(登録番号1928, 4781参照)となって何年も発芽しないでいるものもあり肥大した茎の中に埋もれてしまっているものもあります。なにかの切っ掛けでこれが発芽はじめると、太い茎から直接花が咲いたり(梅などで見られます)、不定芽のように枝を出したりします。
暖冬のお陰で、一時的に気温が上昇すると普段より早く発芽してしまった冬芽は葉を出します(芽吹き)が、再び気温が低下すると発芽した芽は低温に耐えられない場合は枯死し翌年はその場所からは枝、葉を形成しません。しかし、低温(雪が降っても)に耐える幼芽もありますし、また発芽しないでいた冬芽もたくさんありますから樹木個体としては枯死するわけではなく、暖かくなれば見た目では例年と変わらずに芽吹くはずです。バラ苗の増殖過程で好ましくない時期に芽吹きがおきると、その部分の枝を切り取ってしまう程です。
このコーナーにはたくさんの類似した質問があります。「樹木」、「休眠」などで検索するとりょうすけ君の知りたいことがかなり分かるようになると思います。大いに利用して下さい。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-12-24
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